【東大】イカは光をねじってナンパしていた
【東大】イカは光をねじってナンパしていた / Credit:透明な体が“派手”を生み出す ―体の透過光を利用したエゾハリイカの求愛ディスプレイ―
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【東大】イカは光をねじってナンパしていた (2/2)

2026.01.27 21:00:49 Tuesday

前ページ人間の目には見えない『光の向き』という情報

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透明な筋肉が光をねじる偏光装置になる

透明な筋肉が光をねじる偏光装置になる
透明な筋肉が光をねじる偏光装置になる / Credit:透明な体が“派手”を生み出す ―体の透過光を利用したエゾハリイカの求愛ディスプレイ―

イカたちは偏をどうやって作っていたのか?

研究者たちは、腕の一部を通り抜ける光を細かく測定しました。

強い光を当てて、腕の基部・中央・先端で透過してきた光の偏光の向きを調べると、入ってきた水平偏光が、腕を通るうちにほぼ直角の方向まで回転していることが分かりました。

研究者たちは、この現象を説明するために、腕の筋肉を「複屈折(光の通る方向で屈折の仕方が変わる性質)」を持った素材として扱う光学モデルを作りシミュレーションを行いました。

すると筋肉の繊維が水平偏光をちょうど90度近く回転させる偏光装置(生体ウェーブプレート)として働いていることが示されました。

さらに、その結果できる水平+垂直の偏光パターンは、コウイカの偏光視にとって最大限コントラストが高くなるような配置になっている可能性が高いとこともわかりました。

つまりオスのエゾハリイカは、求愛のときだけ長い腕を前に伸ばし、その腕の筋肉を通して背景の光の向きをねじり、「メスの目にはギラギラ見えるが、人間の目にはほとんど分からない偏光」を作り出していたのです。

ムキムキの腕どころか、腕の中身がそのまま偏光レンズになっていて、光の向きを変えながらナンパしている、と言ってもよさそうです。

論文の考察では、こうした偏光シグナルが、クジャクの尾のような色彩の性装飾(sexual ornament:モテるための飾り)と同じくらい「目立ちやすさ」を持ちうることが議論されています。

研究者にとってもこの発見の瞬間はかなり特別だったようです。

何日も水槽の前で待ち続け、ついにノートパソコンの画面に偏光パターンが浮かび上がったとき、研究者は「人生で最も忘れがたい瞬間の一つだった」と語っています。

光の明るさや色をほとんど変えずに、偏光だけを変える信号は、特定のセンサーやメガネを持つ相手にだけ読める“ステルス掲示板”のようなものになりえます。

もしこの発想をうまく応用できれば、敵には見えず味方だけ読めるステルス信号が作れる可能性もあります。

私たちはふだん、「世界は人間の目で見えている通りだ」とつい思い込みがちです。

しかし、エゾハリイカの世界では、同じ海の中でも、色とは別の“光の向きの景色”が広がっていて、その中で恋愛や生存のかけひきが行われていることを教えてくれました。

もしかしたら未来の水族館では、偏光カメラつきのゴーグルを貸し出して、イカたちの恋愛劇場を眺められるコースが開設されているかもしれません。

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