睡眠不足でフッと意識が飛ぶとき、脳の中で何が起きているのか──MITの徹夜実験

果たして脳は起きている最中に“勝手なお掃除”を始めてしまうのでしょうか。
この疑問に答えるために、研究チームはまず26人の健康なボランティアを集め、通常どおり睡眠をとった翌朝と、一晩完全に徹夜した翌朝のそれぞれで脳と体の状態を計測しました。
具体的には、被験者に朝から注意力テスト(画面上の標的の変化に気づいたらボタンを押す課題)を行ってもらいながら、脳波、MRI、脳脊髄液の流れ、心拍、呼吸、瞳孔サイズといった脳と体の働きを同時にモニタリングしました。
その結果、徹夜明けでは予想どおり反応時間の平均が遅くなり、押し忘れも大きく増えました。
しかし本当に驚くべきなのは、その「ミスの瞬間」に合わせて、脳と体にどのような変化が起きていたかという点です。
研究チームは、テスト中のデータを60秒ごとの区切りで、「高い注意(すべて速く反応)」「やや注意低下(遅い反応が混じる)」「注意の失敗(押し忘れを含む)」の3つの状態に分類しました。
すると、注意が落ちた区間ほど、脳脊髄液の低周波の揺れが大きくなっていることが分かりました。
さらに、徹夜明けの「起きている休憩時間」の脳脊髄液の動きを調べると、0.04ヘルツ前後の大きな波が現れ、その強さは通常のN2睡眠(浅いノンレム睡眠)とほぼ同じレベルに達していました。
つまり、目を開けて起きているはずの状態に、睡眠特有のゆっくりした脳脊髄液の波が侵入してきていたのです。
「ミスが起きる瞬間」をさらに細かく見ると、その様子は一段とドラマチックです。
ボタンを押し忘れる試行の少し前から、脳波は「眠りに落ちかけ」のパターンに変わり、瞳孔はキュッと縮み、心拍や呼吸も落ち着いた状態へと沈み込んでいきます。
その数秒後に、第四脳室という場所から脳脊髄液が外側へ押し出される大きな波が現れ、さらに数秒たつと今度は逆向きに戻ってきます。
注意が戻るころには、瞳孔は再び開き、心拍や呼吸も元のリズムに戻ります。
つまり徹夜明けの「ぼーっとしている十数秒」は、脳波・血流・脳脊髄液・瞳孔・心拍・呼吸がまとめて眠りに近いパターンへ揃い、脳の中を脳脊髄液の大きな波が行ったり来たりしている時間だと考えられます。
起きているのに、脳のほうは短時間だけ睡眠のような機能を挟み込んでいる――その姿が、今回の研究で見える形でわかったのです。

























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