ガチ恋している人の血液は脳を育てる成分が多い

本当に「恋人あり」と「恋人なし」で「脳の肥料(BDNF)」が違うのか?
答えを得るために研究者たちはまず、イタリア・ピサ大学で安定した恋愛関係にある31人と、恋人がいない29人を集め、全員から朝8〜9時の空腹時に15ミリリットルの血液を採りました。
この31人の交際期間は1年以上で、1〜8年と幅があり、平均は2年弱でした。
結果は非常に分かりやすいものでした。
恋人ありグループでは、血小板でも血清でも恋人なしグループではBDNFの量に1.5倍の差がありました。
この差は統計的にも非常に有意で、効果量と呼ばれる指標でも「かなり大きい」といえるレベルでした。
BDNFそのものに性差はほとんどなく、「恋人がいるかどうか」という要因が、BDNFの違いのかなりの部分を説明していました。
では、これは何を意味するのでしょうか。
研究チームは、今回のBDNFを「今の恋愛状況のステータスを示すもの」としてとらえています。
つまり血中のBDNFだけを手がかりにして『この人は安定した恋愛関係にいそうか』と当てっこをすると、全くの勘よりはかなりマシなヒントになるそうだ、ということです。
また研究者たちはその仕組みについて2通りの説明を提示しています。
1つは安定した恋愛関係が、支え合いや安心感によってストレス反応をやわらげる「社会的クッション」として働き、その影響でBDNFを含む体の調整システムが少し変わっているのではないか、というものです。
パートナーとのやりとりの中で不安や孤独が緩和される生活が続くと、慢性的なストレスによってBDNFが削られにくくなり、「脳の肥料タンク」が高めに保たれている、というイメージです。
もう1つはBDNFが高い人は、ストレスに強く、気分の乱高下から立ち直りやすい「BDNF高め体質」という考えです。
そのような人は、恋愛関係の中でトラブルが起きても、感情を整えたり、話し合いで落としどころを見つけたりするのが比較的得意で、結果として安定した長期関係を築きやすい可能性があります。
ただどちらにせよ、恋愛の状態と「BDNFの数値」が対応して見えました。
しかも、今回見ているのは、燃え上がる初期ではなく、1年以上続いている落ち着いた関係でした。
恋によって血中に大きな違いが生じるという結果は、恋愛も化学成分の支配下にあることを感じさせます。
とはいえ今回の研究で集められた被験者はイタリアの若い人々(平均年齢27.4歳)であり、他の文化でも同様の結果が出るかはまだ確かめられていません。
それでも、この研究が投げかけたメッセージは小さくはありません。
もし今後、別の国や文化、年齢層でも似た結果が積み重なれば、「安定した関係を支える脳の化学成分」が、もっとくっきりとした姿で見えてくるでしょう。
またこれまでBDNFは、主にうつ病などの病気と関連づけて語られてきましたが、今回の結果は、健康な人の「安定した恋愛」というポジティブな側面とも結びついている可能性を示しました。
BDNFはうつ病や運動習慣など、恋愛以外のさまざまな要因でも変化しますがそれでも、「恋人がいるかいないかで血中BDNFがここまで違って見えた」という事実は、今後の研究者たちに強いインスピレーションを与えるはずです。
もしかしたら未来の世界では、恋人との安定的関係性を示す指標が、肝臓や腎臓の数値の下にこっそりと並んでいるかもしれません。



























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