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Credit:川勝康弘
biology

人間のDNAには無数の「旅人遺伝子」が刻まれているようだ (2/4)

2026.02.24 19:30:57 Tuesday

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旅人遺伝子を濃く持つ人は優秀に見える

旅人遺伝子を濃く持つ人は優秀に見える
旅人遺伝子を濃く持つ人は優秀に見える / Credit:Canva

旅する人はどんな性質を持つのか?

答えを得るため研究者たちは、移動に関わる遺伝的違いがほかの形質とどれくらい重なっているかを調べました。

すると、教育年数、所得、認知能力、リスクを取る傾向、対人関係でべったりしすぎない傾向などと、強い遺伝的相関があることが分かりました。

遺伝的相関とは、たとえば「お酒好きという性質と甘いもの好きという性質が、どれくらい同じ遺伝子セットを共有しているか」を表す指標です。

+1 に近い場合は「お酒好きになりやすくする遺伝子」と「甘いもの好きになりやすくする遺伝子」が、ほぼ同じ遺伝的土台を持っていることを示します。

逆に−1 に近い場合は、遺伝的にみて、片方になりやすい人ほどもう片方にはなりにくいことを示します。

具体的には

①教育年数との相関は約+0.9

これはかなり高い数値で「長く学校に通いやすい遺伝的傾き」と「遠くへ移動しやすい遺伝的傾き」が、ほぼ同じ方向を向いているレベルでした。

②所得との相関は約+0.8

これも「稼ぎやすいタイプ」は平均すると「遠くへも出やすいタイプ」と遺伝的に重なりが大きいことを示します。

③認知能力との相関は約+0.7

の“問題処理エンジン”が強い人は、遺伝的には遠くへ動きやすい傾き、教育年数や所得に次ぎ、もかなり強くなっていました。

さらに人生のイベントと旅に出やすい遺伝的性質の間にも関係がありました。

④初産年齢との相関は約+0.6

これは、遠くへ移動しやすい遺伝的傾向は、初産が遅めになりやすい遺伝的傾きとかなり重なっていることを示します。

⑤初めての性体験の年齢の高さとの相関は約+0.5

遠くへ移動しやすい遺伝的傾向は、性体験が遅めになる傾きと中程度のレベルで重なっていることを示します。

そして性格特性ともいくらかの関係がありました。

⑥開放性との相関は約+0.3

新しいもの・知らないものをおもしろそうと思いやすい遺伝的傾きは、遠くに移動しやすい遺伝的傾向と少し重なると言う意味です。

⑦リスク許容との相関は約+0.1

意外なことに遠くに旅に出る遺伝的性質は、リスクをとる性質と僅かにしか一致していないことを示します。

つまり「旅はリスク」だから「リスクが好きな人は旅に出る」という関係はかなり薄かったのです。

⑧攻撃性との相関は約−0.4

つまり旅人タイプは攻撃的になりやすい遺伝的傾きとは逆向きに重なっていることを示します。

旅人は乱暴者よりむしろ温和が多いというより、「乱暴さとセットになっているわけではない」というイメージです。

⑨反社会的行動などとの相関は約−0.2

これは移動しがちな旅人遺伝子を持つ人は、ルールを破ったり問題行動を起こすことは少なめという意味です。

ファンタジーなどではよそ者が暴れて村で事件が起こるという展開が良くありますが、遺伝相関では遠くへ移動しやすい遺伝的傾きは、「トラブルメーカー」とは少しだけ重なりにくいわけです。

⑩神経症傾向との相関は−0.3前後

遺伝的な「旅人タイプ」は、平均すると“不安に縛られにくい方”に少し寄っていると言えるでしょう。

ざっくり言うと、移動しやすい「旅人タイプの遺伝子パターン」あるいは「放浪タイプの遺伝子パターン」を多めに持つ人というのは「学びたがりで、ちょっとリスクも取れそうで、精神的に自立しやすい。人生のタイミングで言えば、結婚や子どもを持つのが少しゆっくりめで、「すぐに家庭に落ち着く」というより、「もう少し自分の時間で動いてみてからでもいいかな」と思いやすい傾きと重なっています。性格の面では、「新しいものや知らない場所をおもしろそうだと思いやすい」開放性はやや高めですが、「危険が大好きな無茶なリスクテイカー」というわけではなく、むしろ、攻撃的だったり、ルール違反を繰り返したりする傾きとは逆向きで、「トラブルメーカー」よりもおだやかで問題行動の少ない側に寄っています。また、慢性的な不安に縛られにくく、「心配で一歩も動けない」というよりは、「不安はあるけれど、それでも一歩踏み出してみよう」という傾向を持ちやすいのです。

直感的にみて、これらの要素は優秀さを感じさせます。

もちろんこれは複数の相関関係をまとめたもので、旅人タイプを色濃く持つ人であっても、学びが嫌いだったりトラブルメーカーだったりする場合もあります。

ただこうみると「旅人遺伝子」とここで呼ぶものが、単純に移動したい気持ちを駆動するだけのものではなく、実態は多様な性質が合わさってできたものだと言えるでしょう。

次はそんな旅人遺伝子の時間を超えた旅を見ていきます。

人類は進化の過程で旅人遺伝子を増やしたのでしょうか、それとも減らしたのでしょうか?

次ページ旅人遺伝子を持つ人は古代から少しずつ増えてきた

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