タウリンの香りでホヤが集合・変態する

ホヤの固着を促す成分は本当にあるのか?
答えを得るために研究者たちはまず、実際のホタテ養殖用の網カゴを海に沈め、6か月後に回収して、ホタテが入っているカゴと殻だけのカゴとで、どれだけホヤが付着しているかを比べました。
すると、ホタテが入っている方によりホヤが多く付着しており、「ホタテの中身から出る何か」が幼生を呼び寄せているらしいことが見えてきました。
次に、研究者たちは、ホタテの筋肉や生殖腺、ホヤ成体の体から、小さな分子だけを含んださまざまな抽出液を作りました。
これを寒天につめて、周りにホヤの幼生をたくさん放ちました。
そしてホヤがより多く集まった抽出液を分析し、どんな成分がどれだけ入っているかを調べました。
するとホヤの幼生を強く引き寄せていた成分が「タウリン」だけであることがわかりました。
タウリンはエナジードリンクにも含まれていることが知られる、アミノ酸の一種です。
研究者たちがタウリンの濃度を変えた海水にホヤの幼生を放ったところ、タウリンの濃度が濃いほど尾が縮んだ幼生の割合が増えました。
つまりタウリンは、幼生を集める「匂いの目印」であると同時に、その場で変態を始めさせる「変身スイッチ」でもあったのです。
では幼生の体のどこで、タウリンの匂いを感じているのでしょうか。
研究者たちは細胞が活動したときに光るタンパク質をホヤの幼生に仕込み、タウリンを加えた時にどこがどう光るのかを調べました。
するとホヤ幼生たちの頭の先端部分にある突起に含まれるニューロン(一次感覚ニューロン)が強く光っていることが判明します。
続いて、その下にある運動神経節、そして尾の中を走る神経索へと、光る場所が時間差で広がっていきます。
まるで、「タウリンを見つけたぞ!」という知らせが、頭の先から尾の先までリレーされているようでした。
またこのとき中継役をしているのが特定のホルモンであるGnRHを出す神経細胞であることが示唆されました。
これらをまとめると、ホタテやホヤ成体からしみ出したタウリンの濃さの差を、先端のセンサーにあるニューロンが感じ取り、その情報が中継神経を通って運動神経節と尾の神経索に送られます。
その結果、幼生はタウリンが多い方向へ泳ぎ、そこで脳や尾を捨てて大人になっていく――──という流れが見えてきます。
言いかえれば、タウリンの匂いはホヤ幼生にとって「ここに行けば仲間とご飯がたくさんある安全地帯だよ」という案内板であり、その案内板の前で変身ボタンまで押してしまう役割を担っているのです。




























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