黒人宇宙飛行士の「生涯」を追体験すると、黒人をより身近な存在に感じる
この研究の面白いところは、「考え方」だけでなく「行動」も調べている点です。
まず質問票では、動画を見た人たちは黒人に対するポジティブな評価が上がり、ネガティブな評価が下がっていました。
つまり、見終えたあとには相手を見る目そのものが少しやわらいでいたのです。
さらに研究チームは、その変化が言葉の上だけではないかを確かめるため、「最後通牒ゲーム」という課題を使いました。
これは10ドルをどう分けるかを決めるゲームで、一方が分け方を提案し、もう片方は提示された分け方を受け入れることも拒否する(全額没収)こともできます。
参加者は、白人に多い名前の相手と、黒人に多い名前の相手を想定して判断しました。
研究チームは、この違いによって相手への協力行動がどう変わるかを見たのです。
結果は興味深いものでした。
動画を見た人たちは、黒人名の相手に対する平均的な寛大さを、対照群の0.49ドルから1.00ドルへと高めていました。これは104%増にあたります。
しかも、この変化は白人名の相手には見られませんでした。
つまり、誰にでも一律に優しくなったというより、黒人に対する態度や協力の傾向が変わったと考えられます。
また、もともとバイアスが高かった男性、18〜43歳の若年層、共和党支持者では、態度面の改善がより大きく見られ、金銭的な寛大さは300%以上の増加が見られました。
研究チームは、こうした効果の背景にポジティブ感情の増加があることも示しています。
また、動画を見た人ほど前向きな感情が高まり、その感情の変化が、黒人に対する見方の改善や協力的な行動の増加につながっていました。
単に「差別はよくない」と説明されたから態度が変わったのではありません。
ロナルド・マクネイア氏の人生を通して、視聴者が「不公平さ」や「努力と達成」に感情を揺さぶられ、彼の人生に引き込まれたことが大きかったと考えられます。
つまりこの研究が示したのは、人は抽象的な正論だけで変わるとは限らず、誰かの人生を具体的な物語として追体験したときのほうが、相手をより身近な存在として受け止めやすくなる、ということです。
その結果、「外集団の一員」という冷たい見方が少しやわらぎ、態度だけでなく、お金の分け方のような行動にも変化が表れた可能性があります。
しかも効果はその場限りではありませんでした。
実験群の一部を2週間後に追跡したところ、偏見の低下と行動の変化はなお残っていました。
たった3分ほどの動画でも、心を強く動かす物語には、人の見方を少し変える力があるのかもしれません。


























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