「黄金の舌」も発見ーー見えてきた「死後の世界観」
今回の発見が面白いのは、『イリアス』だけではありません。
この墓地では、ローマ時代の人々が死後の世界をどう想像していたのかをうかがわせる品々も見つかっています。
特に目を引くのが、死者の口に入れられていた小さな金の舌です。
考古学者たちは、これを「死後も話せるようにする」ためのものとみています。
金は腐りにくいと考えられていたため、舌を守り、死者がオシリスの審判で自らを弁明できるようにする意味があったらしいのです。
まるで来世に向かうための“発声装置”のようでもあります。
【黄金の舌の画像がこちら】
さらに墓地からは、ミイラだけでなく火葬された遺骨も見つかりました。
ある部屋では、大きな壺の中に成人の焼骨と乳児の骨、さらに動物の頭部が布に包まれて納められていました。
別の部屋でも、複数人の火葬遺骨と動物骨が一緒に確認されています。
つまりこの墓地では、ミイラ化と火葬という異なる埋葬法が並存していたのです。
加えて、ハルポクラテス(ギリシア神話の沈黙の神)やキューピッド(ローマ神話の愛の神)に似た小像も出土しており、エジプト的な信仰とギリシャ・ローマ的な文化が入り交じっていたことも見えてきます。
オキシリンコスは単なる地方都市ではなく、複数の文化や宗教観が重なり合う場でした。
だからこそ、エジプトのミイラの中からギリシャ叙事詩の断片が出てくるという、一見奇妙な出来事も起こりえたのでしょう。
古代の墓は、しばしば静かな場所として語られます。
しかし実際には、そこには生者たちの信仰、知識、習慣、そして文化の混ざり合いが濃密に封じ込められています。
今回のミイラは、そのことを非常に鮮やかに示してくれました。
最後に見つかったのが『イリアス』だったというのも象徴的です。
戦争と栄光を歌う叙事詩が、長い時を経て死者の体内から現れたのです。
古代の人々にとって、言葉は生者のものだけではなく、死後の世界にまで持ち込まれる力を持っていたのかもしれません。




























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