ハトは楽園実験でカオスを生成していた――「ご褒美が確実」でも違う答えを試し続ける
ハトは楽園実験でカオスを生成していた――「ご褒美が確実」でも違う答えを試し続ける / Credit:Canva
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ハトは楽園実験でカオスを生成していた――「ご褒美が確実」でも違う答えを試し続ける (3/4)

2026.04.21 20:30:55 Tuesday

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効果の法則を超える「混沌の淵」という生存戦略

効果の法則を超える「混沌の淵」という生存戦略
効果の法則を超える「混沌の淵」という生存戦略 / Credit:Canva

ここまでで分かってきたのは、ハトには”お気に入り”が存在すること、そしてハトは決してその”お気に入り”だけに固執しないことです。

しかし、なぜハトたちは確実にエサがもらえる行動を繰り返すだけでは満足しないのかは、十分には説明されていませんでした。

そこで研究チームが持ち出したのが、複雑性理論の第一人者スチュアート・カウフマンが提唱した「混沌の淵(edge of chaos)」という概念です。

これは、生物システムが進化のプロセスで自然と引き寄せられる状態を指します。

完全に秩序立ってもいないし、完全にカオスでもない。構造を保ちながら、適応と成長のために揺れ動ける絶妙なバランス地点のことです。

ハトたちの行動は、まさにこの「淵」に位置していたと研究者は考えています。

秩序側:好きな順番を持ち、それを頻繁に使う(=効果の法則)

混沌側:にもかかわらず、別の手順も常に試し続ける(=探索的性向)

この2つが1羽の中で同時に動いているのです。

ワッサーマン教授は「何かが、鳥たちの反応が完全に機械のようになるのを防いでいるのです」と言います。

つまり、ハトたちは”バグ”で違う順番を試していたのではなく、生き残りのために結果として柔軟性を保っていたと考えられるのです。

環境は変わる。エサの場所は変わる。

今日のラクな道が、明日も最適とは限らない。

ならば、いつもちょっとだけ違うことを試しておくほうが、長期的には安全――そんな”保険”のような機構が、脳に組み込まれているのかもしれません。

注目すべきなのは、この性質がハトだけのものではなさそうだという点です。

次のページでは、いよいよこの「混沌の淵」が、人間のどんな能力とつながっているのかを探っていきます。

次ページ音楽も絵画も発明も――「恵まれた食料➔カオス➔創造性」の流れによるかもしれない

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