男性では、相手が「ライバル」や「外集団」だと反応が高まった
結果として、男性では試合後にオキシトシン濃度が上昇しました。
特に上昇が大きかったのは、よく知っているライバルと対戦した後でした。
一方、別のチマネ共同体のチームと対戦した場合には、上昇は比較的小さくなりました。
しかし、チマネではない人々と対戦した場合には、オキシトシンの上昇が再び大きくなりました。
これは、オキシトシンが単に運動量や試合そのものに反応しているだけではなく、対戦相手の社会的な意味に反応している可能性を示しています。
つまり、相手が「よく知るライバル」だったり、「自分たちとははっきり違う外の集団」だったりすると、体の中で集団意識に関わる反応が強まるのかもしれません。
一方で、女性では男性のような試合前後の明確なオキシトシン変化は見られませんでした。
研究者はその理由として、女性参加者の多くが授乳中で、もともとのオキシトシン濃度が高かった可能性を挙げています。
また、チマネ社会では女性は男性ほど頻繁にサッカーをしないため、サッカーという競技の社会的な意味が男女で異なっていた可能性もあります。
さらに研究者は、男性が進化的に集団間競争へ強く関わってきたとする「男性戦士仮説」とも関連するかもしれないと述べています。
ただし、これは「女性には競争心がない」という意味ではありません。
チマネの女性にとって重要な競争は、身体的な試合ではなく、評判の管理や社会的支援をめぐる人間関係の中に表れやすい可能性があります。
また、この研究だけでは、オキシトシンの上昇がチーム内の結束を強めたのか、相手チームへの競争心を強めたのかを切り分けることはできません。
チームスポーツでは、仲間との協力と相手との競争が同時に起こるためです。
それでも今回の研究は、「愛情ホルモン」という名前の裏にある、もう少し複雑な働きを見せてくれます。
オキシトシンは、人をただ穏やかにするホルモンではなく、「自分たち」と「相手」を意識しながら協力するためのスイッチにもなっているのかもしれません。
仲間と肩を組んで戦うとき、私たちの体内では、勝ち負け以上に古く深い集団の仕組みが動き出している可能性があるのです。




























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