新品のプラスチック製ケトルの内部で起きていること
研究チームは、ケトル内部を電子顕微鏡で詳しく観察しました。
すると新品の内壁表面には、細かな凹凸や粒子状の付着物が多数存在していました。
研究チームは、これらが製造工程で生じた、表面にゆるく付着した粒子である可能性を考えています。
つまり、新品ケトルでは、内壁に残っていた微細なプラスチック片が、最初の沸騰で水中へ移りやすい状態になっていたと考えられるのです。
実際、ナノプラスチックとマイクロプラスチックの放出量は最初の10回程度で大きく低下し、50回以降ではかなり少なくなりました。
イメージとしては、新品の製品表面に残っていた細かな粉や削りくずが、最初の使用で多く洗い流され、使ううちに少しずつ落ち着いていくような現象です。
しかし完全にゼロにはなりませんでした。
研究では150回沸騰後でも、低レベルながら粒子放出が続いていました。
それでも論文では、ナノプラスチックの放出量は150回の沸騰後に、初回と比べて約96%減少したと報告されています。
さらに興味深かったのが、「硬水では放出量が減少した」という結果です。
硬水にはカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが多く含まれています。
これらは加熱時に白い水垢、つまり石灰スケールを形成します。
研究チームは、このスケール層がケトル内部を覆い、プラスチック粒子の放出を抑えている可能性を指摘しています。
普段は嫌われがちな水垢が、ナノプラスチックの放出を減らす保護膜のように働いているかもしれないのです。
では、私たちは今すぐプラスチック製ケトルを捨てるべきなのでしょうか。
今回の研究は、そこまでは結論づけていません。
重要なのは、この研究が、ケトル由来の粒子を飲んだときに人体へどのような影響が出るかを直接調べた毒性試験ではないという点です。
ナノプラスチックの健康影響はまだ研究が進められている段階であり、今回の成果は主に「どこから、どれくらい出るのか」を示したものです。
その一方で、研究チームは比較的現実的な対策も示しています。
最も簡単なのは、新品のケトルを購入した際、数回ほど沸騰させてお湯を捨ててから使うことです。
研究者たちは、初回使用前の単なる「すすぎ」だけでは、沸騰させて捨てる工程ほどの除去効果は得られにくいと説明しています。
また、内側がプラスチック製ではなくステンレス製のケトルを選択することで、ナノプラスチックの人体への取り込みを防げるかもしれません。


























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