金が錆びない「新しい理由」を発見――単に酸素と反応しないだけではなかった
金が錆びない「新しい理由」を発見――単に酸素と反応しないだけではなかった / Credit:Canva
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金が錆びない「新しい理由」を発見――単に酸素と反応しないだけではなかった (3/4)

2026.05.22 20:30:58 Friday

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表面防御がないと金はすぐに錆びる金属だった

表面防御がないと金はすぐに錆びる金属だった
表面防御がないと金はすぐに錆びる金属だった / Credit:Canva

どうやって表面の六角形が金を錆から守っているのか?

ここで思い出してほしいのは、空気中の酸素は、ふだん原子が2個ペアになった「酸素分子(O₂)」のかたちで漂っているということです。

このペアが金属と本格的に反応するためには2つをバラバラに引き離す必要があります。化学では、こうしてペアが2つに分かれることを「解離(かいり)」と呼びます。

解離してバラバラになった酸素原子1個1個が金属にくっつくことで、ようやく酸化が本格的に進んでいくのです。

そして、このペアを引き離すには、ちょっとした「ひと押し」のエネルギーが要ります。

通常は外部からエネルギーを叩き込んでやる必要がありますが、化学の世界にはペアの2人それぞれに、ペアでいるよりも居心地のいい「行き先」を用意してあげるというやり方があります。

たとえばスッポリとはまり込んで居心地がよくなるスキマなどです。

このようなスキマは、実は金属の表面にはたくさんあります。

というのも金属の原子は周囲の電子たちも含めると、丸いボールに近い形をしています。

そして同じボールでも、並べ方によって、ボールとボールのあいだに残るすき間の大きさは、ずいぶん変わってきます。

たとえば、ビー玉を碁盤のマス目のように整列させた場合、1個のビー玉のまわりには4つの仲間しか接していません。

そのため、ビー玉が4つ集まったところどころに、ひし形のけっこう大きなすき間がぽつぽつと残ります。

このひし形のへこみは、バラけた酸素原子1個1個がちょうど腰を下ろせるサイズになっています。

スキマにすっぽりはまり込むと、底や側面の何個もの金原子が、酸素分子をいっせいに掴めるようになります。

たくさんの金原子に同時に手をかけられた酸素ペアは、引き伸ばされてほどけやすくなるのです。

つまり、酸素が金属を変えるには、3つの関門があるわけです。

・関門① まず、酸素分子が金属の表面に近づく

・関門② 次に、酸素分子の手をほどく

・関門③ そして、ほどけた酸素が金属にくっつく

ところが金の場合は、表面がハチの巣のように六角形の並び方をしていました。

1個のビー玉のまわりに6つの仲間がぴったり寄り添う感じです。

このときできるスキマは、かなり狭い三角形型です。

酸素原子1個ですら、そこに腰を下ろすには居心地が悪すぎる。

さらに「ほどいたあと、2人が座れる場所がない」――そうなると酸素分子を解離させる引っ張りも起こりにくく、起きたとしても2つの原子がバラバラになれるほど空間的余裕がなくさらに解離しにくい、という条件が重なります。

結局、酸素はペアのまま、金の表面をふらふらと漂うしかなくなるのです。

・表面の「六角形」は、どこから来ているのか?

金の塊の内部では、ひとつの金原子は12人ものご近所さんにぐるりと囲まれて、ぎゅっと落ち着いています。

ところが切ったり磨いたりすると、内部にいた原子が突然「表面」に出されてしまいます。

上半分が空気の世界になり、まわりの仲間の数も急に減ってしまうのです。

このとき、表面の原子が何人のご近所と接していられるかは、金属の塊をどの向きで切ったかによって変わります。

野菜を真っ直ぐ切るか斜めに切るかで、断面の見え方が違ってくるのと同じです。

そして、金の表面に六角形が現れるルートは、大きく2通りあります。

ひとつは、最初は仲間が少なくスカスカで現れる切り口(専門的にはAu(110)やAu(100)と呼ばれる面)です。

仲間が少なくて落ち着かない原子たちは、ほんの数秒のうちに自分から動きはじめ、もっと仲間の多い六角形の並び方へと自前で組みなおします。

もうひとつは、もともと六角形に近い並びを持って現れる切り口です(金の中でもっとも安定な面で、専門的にはAu(111)と呼ばれます)。

こちらは別の研究からよく知られている話で、ふつうの指輪や金貨など実物の金製品に多く現れる代表的な顔つきです。

今回の論文の中心はAu(110)とAu(100)の並び替えですが、より広く「六角形に近い金表面はどれも酸素を割りにくい」という傾向も同時に示されました。

並び替えを経てたどり着く六角形と、最初から完成している六角形。入口は違っても、ゴールはどちらも同じ「六角形の陣形」です。

ですから今回の発見は、特別な表面だけの話ではありません。

私たちが普段、指輪を眺めたり金貨を手にしたりするその表面でも、似た仕組みが効いていると考えられます。

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