猫はキャットニップ派よりマタタビ派が圧倒的

研究の舞台は、岩手県盛岡市の民家の庭でした。
研究チームは、あらかじめ庭で栽培していたキャットニップのすぐ近くに、採れたてのマタタビの枝葉をポンと置きます。
庭は高さ1.2mの金網フェンスで囲まれていますが、猫はくぐったり乗り越えたりして自由に出入りできる――まさに「猫の意思しだい」の条件です。
夜行性の猫の行動をとらえるため、地面に暗視カメラを設置。
夕方6時から翌朝5時まで、6月から9月にかけて雨の日を除き、延べ22晩にわたる観察が行われました(うちマタタビの枝葉を置く最初の実験は10晩)。
カメラに映ったのは、外見で識別できる6匹の地域猫。
そのうち5匹が、合計21回もの「ゴロンゴロン擦り付け反応」を見せました。
しかし、そのターゲットは――例外なく、すべてマタタビだったのです。
すぐ隣に元気に生えているはずのキャットニップにも、収穫したばかりのキャットニップの葉にも、擦り付け反応を見せた猫は一頭もいませんでした。
「植物の見た目で判断しているだけかも?」と研究チームは考え、次の実験を用意します。
両方の植物から成分だけを取り出した抽出液(葉をすり潰して溶媒で成分を抽出した液体)を、1つのレンガの左右両面に塗り分けて庭に置いたところ、結果はやはり同じ傾向でした。
マタタビ側にだけ反応する猫はいても、キャットニップ側にだけ反応する猫は1匹もいませんでした。
ただし、ここで一つ疑問が残ります。
「これは、日本の地域猫がたまたまマタタビに慣れているせいでは?」
研究チームはまったく同じ疑問を抱き、追加実験として、日本国内の2つの施設で飼育されている純血種の猫22匹を集めました。
アメリカ・イギリス・ロシア・イラン由来の9品種――アメリカンショートヘア、エキゾチックショートヘア、マンチカン、スコティッシュフォールド、メインクーン、ミヌエット、ペルシャ、ロシアンブルー、ベンガル――かなり豪華なラインナップです。
しかも最大のポイントは、これら22匹が飼育記録の上では本研究までマタタビにもキャットニップにも与えられたことのない個体ばかりだったこと。
経験による影響をできるだけ抑えた、まっさらに近い状態でのテストでした。
普段過ごしているリラックスした部屋の中に、両方の抽出液を染み込ませたろ紙を15cm離して同時に置きます。
猫たちは近づくも嗅ぐも無視するも完全に自由。
結果は――
マタタビにだけ反応 15匹
キャットニップにだけ反応 3匹
両方に反応 1匹
匂いは嗅いだがゴロンとはしない 3匹
統計的にも、マタタビへの反応がキャットニップに対して有意に多いという結果になりました。
「マタタビ優位」は日本の地域猫だけに限られた現象ではなく、海外由来の品種を含むさまざまな猫にも見られる傾向である可能性が、ここで初めて科学的に示されたわけです。
しかし、本当に驚くべきはここからでした。
注目すべきは、化学分析の結果です。





























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