宇宙を終わらせる「真空崩壊理論」を原子の輪で確かめた――終末の種は量子トンネルから来た
宇宙を終わらせる「真空崩壊理論」を原子の輪で確かめた――終末の種は量子トンネルから来た / Credit:Canva
quantum

宇宙を終わらせる「真空崩壊理論」を原子の輪で確かめた――終末の種は量子トンネルから来た (4/4)

2026.06.09 18:45:08 Tuesday

前ページ原子の輪で「小さな宇宙の終わり」を作る

<

1

2

3

4

>

私たちの宇宙は、終わるのか?

私たちの宇宙は、終わるのか?
私たちの宇宙は、終わるのか? / Credit:Canva

じつは、私たちの宇宙が「偽の底」にいるかもしれないという話は、ただの空想ではありません。

2012年に発見された「ヒッグス粒子」という素粒子の重さなどから計算すると、私たちの宇宙はちょうど「安定」と「危うい安定(準安定)」の境目あたりにいる可能性が示されています。

つまり、いま私たちが暮らしているこの宇宙の真空そのものが、「本当の底」ではないかもしれない。

もっと深い底が存在し、いつかそこへ崩れ落ちる可能性がある——そんなことを、素粒子の実測データが示唆しているのです。

とはいえ、ひとつ救いがあります。

仮にそうだとしても、崩壊までの時間は宇宙の今の年齢よりもはるかに長いと見積もられています。

現在の標準模型にもとづく計算では、10の数百乗年——つまり、1のうしろにゼロが数百個も並ぶような途方もない数字になります。

宇宙の今の年齢は約138億年ですから、宇宙がこれから何度「生まれ変わって」も足りないほどの時間です。

さらに、今回のような閉じた系——外部とエネルギーをやりとりしない系——では、生まれた泡は無限に膨張することができませんでした。

エネルギーが保存されるために、泡の暴走が食い止められたのです。

「光速で宇宙全体を飲み込む」という最悪のシナリオは、少なくともこの小さな宇宙の中では実現しませんでした。

しかし同時に、「底の作り方で終わりの姿が変わる」という発見は、私たちにこうも告げています。

宇宙の運命を正しく予測するには——あくまで実験からの推測ですが——今の宇宙が「どんな状態にいるか」を正確に知る必要がある、と。

そしてそれは、まだ十分には分かっていないのです。

注目すべきは、この問いに挑んでいるのが清華大学のチームだけではないことです。

論文の末尾には、ドイツ・テュービンゲン大学のクリスティアン・グロス教授のグループが、2次元のリュードベリ原子配列を使った同様の研究を同時期に進めていたことが記されています。

世界の複数のチームが、同じ壮大な問いに異なる角度から挑んでいるのです。

今後、研究チームはより高い次元の系や、複雑な格子構造への拡張を目指しています。

今回の実験は1次元の「輪」でしたが、2次元や3次元の配列に進めば、より豊かな「場」のふるまいを模倣できるかもしれません。

さらに、偽の底と本当の底が複数存在するような、より入り組んだエネルギー地形の研究も視野に入っています。

宇宙はこれまで何度も「衣替え」しそのたびに、前の時代の安定は跡形もなく消え去りました。

次の衣替えがあるのかどうか、あるとすれば、それはどんな姿をしているのか。

その答えに近づくための手がかりは、もしかすると、こうした小さな原子の輪の上に、すでに現れ始めているのかもしれません。

<

1

2

3

4

>

コメントを書く

※コメントは管理者の確認後に表示されます。

0 / 1000

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

量子論のニュースquantum news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!