丁寧に話そうとすると、人は実際にゆっくり話す
次にチームは、聞き手の印象だけでなく、話し手自身の意図にも注目。
英語話者100人を対象にした実験で、参加者に、見知らぬ人に小さな頼みごとをする場面を想像してもらいました。
半数は「丁寧でフォーマル」に話すように、残りの半数は「カジュアルでインフォーマル」に話すように指示されました。
その後、同じ内容を反対の話し方で言うなら、速く話すか遅く話すかを尋ねました。
すると80%の人が「丁寧にするなら遅く、カジュアルにするなら速く話す」と答えました。
さらに別の94人を対象にした追試では、「速度を変えない」という選択肢も用意されました。
それでも63%の回答が、丁寧に話すなら遅くするという仮説と一致しました。
ただし、ここまでの実験は、聞き手の判断や話し手の自己申告に基づくものでした。
そこで最後の実験では、実際の発話が録音されました。
対象となったのは、ヘブライ語を話す73人です。
参加者には、見知らぬ学生に質問票への記入をお願いする同じ台本が渡されました。
一方のグループは丁寧に、もう一方のグループはカジュアルに読むよう指示されました。
重要なのは、両グループの台本が完全に同じだった点です。
その結果、丁寧に読んだグループの録音時間は平均29.66秒でした。
一方、カジュアルに読んだグループは平均27.94秒でした。
わずか1.7秒ほどの違いですが、この差は統計的に有意でした。
しかも研究者は、参加者に「話す速度を変えてください」とは一切伝えていません。
つまり、人は丁寧に話そうとしただけで、無意識のうちに話すスピードを落としていた可能性があります。
この結果は、礼儀正しさが言葉づかいだけでなく、声のテンポにも表れることを示しています。
もちろん、ゆっくり話せば必ず丁寧に聞こえるわけではありません。
あまりにも遅すぎる話し方は不自然に感じられ、逆に印象を下げる可能性があります。
また、今回の研究では文化差や年齢差、男性でも同じ傾向が見られるかは十分に検討されていません。
そのため、この効果がどこまで普遍的なのかは、今後の研究で確かめる必要があります。
それでも今回の研究は、私たちが日常会話の中で、かなり微妙な声の手がかりを使って相手との距離感を調整していることを示しています。
丁寧さは、ただ正しい敬語を選ぶだけで生まれるものではないのかもしれません。
相手に配慮していることは、ほんの少しゆっくり話すという小さなテンポの変化にも表れているのです。



















































