古代の王女は「箱入り娘」ではなかったかもしれない

今回の研究により、王女たちは宮殿で座っているだけの受動的な存在ではなかった可能性が見えてきました。
金の短剣を握っていたかもしれない手。
弓を引く動作を思わせる、湾曲した手の骨。
治って固まった骨折の痕。
それらは、王女たちが「箱入りのお姫さま」という後世のイメージには収まりきらない、活動的で、時に危険をともなう人生を生きていた可能性をみせてくれます。
ハシェシュ氏は「考古学者たちは長い間、王女たちの宝飾品や装飾品を保存することに力を注いできました。しかし、彼女たちの人間としての姿は忘れられてきたのです。私たちの研究は、それを変えようとするものです」と述べています。
考古学では宝飾品の保存が重視される一方で、それを身につけていた本人の姿は忘れられてきましたが、その人間としての姿を取り戻すことに、この研究の目的は置かれています。
もちろん、彼女たちが本当に戦士だったのか、狩人だったのか、儀礼の担い手だったのか、最終的な答えはまだ確定していません。
上肢が武器使用に一致する変化を起こしているのは、確かに重要な分析結果です。
しかし極端なことを言えば、近接武器や弓の使用とよく似た、別の日常的な反復動作が関係していた可能性も、完全には否定できません。
それでも、この研究が持つ意義は小さくありません。
王女たちの武器をめぐる議論は、これまで副葬品というモノの側からしか語れませんでした。
その議論に、骨という新たな手がかりを持ち込んだこと自体が、大きな一歩なのです。
研究チームは今後、DNA分析や、骨に含まれる元素から食生活や出自をたどる同位体分析を進める予定だといいます。
それが実現すれば、王女たちの血縁関係や食生活、生まれ育った土地について、より確かなことがわかってくるはずです。
古代の世界を解き明かす最も雄弁な手がかりは、ときに、きらびやかな墓の宝物ではなく、そこに眠る人々自身の体にこそ宿っているのかもしれません。






























