なぜ「いいね」でSNS投稿が増えたのか?
今回の結果は、「うつ傾向のある人は、いいねを貰うと誰でも必ず投稿を増やす」という意味ではありません。
研究が示したのは、うつ傾向が強いほど、「いいね」の多少に応じて翌日の投稿行動が変化しやすいという統計的な関連です。
また、研究では、参加者が「いいね」をどれほど心地よく感じたかは測定していません。
そのため、うつ傾向のある人ほど「いいね」を強い喜びとして感じていたと結論づけることもできません。
従来の実験室研究では、うつ病の人は金銭などの報酬に対する反応が弱く、報酬を受けても行動を変化させにくい傾向が報告されてきました。
ところが、今回の現実世界のSNSデータでは、反対の傾向が確認されました。
研究者は、その理由の一つとして、SNSの「いいね」が、実験室で与えられる小さな金銭報酬よりも、本人にとって意味のある社会的な報酬として働く可能性を挙げています。
現実の人間関係で得られる社会的な反応が少ない人は、SNSをその代わりとして利用し、「いいね」をより重視する可能性もあります。
ただし、これは今回の結果を説明する仮説であり、研究によって直接証明された仕組みではありません。
さらに詳しい分析では、「いいね」に対する反応の強さは、うつ症状だけではなく、不安とうつが重なる症状群と関連していました。
一方、強迫傾向や侵入思考は、「前日に多く投稿した人が翌日も投稿を続ける」という別の行動パターンと結びついていました。
また、今回の研究は、投稿履歴とうつ症状との関係を観察したものであり、因果関係を証明したものではありません。
うつ症状が「いいね」への反応を強めた可能性もあれば、「いいね」に行動を左右されやすい状態が、うつ症状と関係している可能性もあります。
社会的な孤立など、別の要因が両方に影響している可能性も否定できません。
研究対象もTwitter利用者に限られており、InstagramやTikTokでも同じ結果になるとは限りません。
それでも今回の研究は、SNSと心の健康を考えるとき、単なる利用時間だけを見るのでは不十分であることを示しています。
重要なのは、どのような報酬を受け取り、それによって行動がどう変わっているかという点です。
「いいね」は、画面上に現れる小さな記号にすぎません。
しかし、その小さな反応が次の投稿を促す力は、利用者の心の状態によって違っているのかもしれません。































