岩には「最大約50個の卵」が付着していた
今回の発見をさらに重要なものにしたのが、イカの近くにあった3群の卵塊です。
卵はブドウの房のようにまとまり、岩の表面へ直接付着していました。
それぞれの卵塊には、約22個、約33個、約50個の卵カプセルが含まれていたと推定されています。
成熟したメスと同時に、近くの岩に付着した複数の卵塊が記録されたのです。

チームが産卵の瞬間を目撃したわけでもないため、このメスがすべての卵を産んだと断定することはできません。
それでも、成体と卵の形態、配置、周囲の環境が一致することから、研究者たちは北東グリーンランドの氷点下のフィヨルドで、ホッキョクダンゴイカが繁殖していることを示す有力な証拠だと考えています。
ダンゴイカを含む頭足類は、魚や甲殻類などを食べる一方で、魚類、海鳥、海洋哺乳類の餌にもなります。
海底と海中の食物網をつなぐ重要な存在です。
また、寿命が短く世代交代も速いため、水温や塩分などの環境変化に反応しやすい生物だと考えられています。
北極圏では温暖化が急速に進んでいますが、もともとの生物分布が分からなければ、何が変化したのかを判断できません。
今回のわずか1個体と3群の卵塊は、将来の生態系の変化を比較するための貴重な基準になります。
ただし、この発見だけで、温暖化によってホッキョクダンゴイカの分布が変化したと結論づけることはできません。
今回の個体が以前から暮らしていた集団の一員なのか、分布域を広げてきたのかを判断するには、今後の継続的な調査が必要です。
小さなROVが捉えた短い映像は、ほとんど調べられてこなかった極地の海に、まだ多くの未知が残されていることを示しています。
































