セミの命はなぜ「七日」と思われてきたのか――日本文化と近代教育から読み解く
セミの命はなぜ「七日」と思われてきたのか――日本文化と近代教育から読み解く / Credit:Canva
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セミの命はなぜ「七日」と思われてきたのか――日本文化と近代教育から読み解く (4/4)

2026.07.29 19:30:31 Wednesday

前ページ隠れたセミの「したたかさ」――薄い食事を命に変える、体内の同居者たち

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ヒグラシが綿毛をまとう頃に

ヒグラシが綿毛をまとう頃に
ヒグラシが綿毛をまとう頃に / Credit:Canva

夏の森で、ヒグラシの腹に、白い綿毛のようなものが付いていることがあります。

ゴミでも、カビでも、卵の塊でもありません。

それは、セミヤドリガという小さなガの幼虫です。

千葉県立中央博物館の解説によると、セミヤドリガは幼虫がセミに寄生するガで、寄生する相手はほとんどがヒグラシとされます。

幼虫はセミの体の上で体液を吸って成長し、終齢の幼虫になると、体の表面から白いロウ状の物質を分泌し、純白の綿毛に覆われたような姿になります。

この白さは、セミの体の上ではよく目立ちます。

ヒグラシの薄暗い褐色や緑がかった体に、真っ白な塊が付いているのですから、人間の目にもすぐわかります。

もっとも、セミヤドリガは、宿主のセミをただちに殺してしまうタイプの寄生者ではありません。

確かに、体液を吸われ、白い幼虫を背負い、余分な重さを抱えることは、短い地上生活の中で何らかの不利になりうるでしょう。

けれど、セミの一生そのものを断ち切るわけではないのです。

一方で、セミヤドリガの側には、セミよりもはるかに短い時間しか残されていません。

この蛾の幼虫は、宿主であるセミの寿命がさほど長くないため、育つ期間もおのずと短く区切られています。

しかもセミから離れ羽化した成虫は口が退化していて、餌をとることができないのです。

ですからこの蛾は、幼虫時代にセミから得た栄養だけを頼りに、次の世代を残し、そして数日ほどで一生を終えます。

はかない夏の虫というイメージ通りに生きて死ぬ虫は、セミではなく、そのセミにひそかに取り憑いていた蛾のほうだったわけです。

一方でセミたちは、薄い樹液を体の内側に微生物という同居者と共に利用するしたたかさを持ち、野外でも一カ月生きている事例も確認されています。

また夏の日にセミたちの声が聞こえてきたら、その声が今度は少しだけ、違って聞こえてくるかもしれません。

参考文献

  1. 堺市立中央図書館.「セミの成虫の寿命は何年か。カラー自然シリーズ『アブラゼミ』では1週間から2週間、カラーアルバム『アブラゼミ』では2〜3週間とある。」国立国会図書館レファレンス協同データベース,管理番号:堺-2021-075,事例作成日2019年7月26日,更新日2021年8月27日,2026年7月29日閲覧。
  2. 大阪市立自然史博物館.「大阪市立自然史博物館 第36回特別展『世界一のセミ展』の開催について」2007年5月10日,2026年7月29日閲覧。
  3. 横浜市立桂小学校.「桂小だより 8月号:セミと研究」2021年7月20日,2026年7月29日閲覧。
    ※植松蒼さんによる笠岡市内でのマーキング再捕獲調査を紹介した資料。資料内では山陽新聞2019年6月19日記事への言及があります。
  4. コトバンク.「空蝉」『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』,2026年7月29日閲覧。
  5. ウェザーニュース.「地面にひっくり返ったセミ、『セミ爆弾』の見分け方」2021年9月6日,2026年7月29日閲覧。
  6. FNNプライムオンライン/石川テレビ.「セミが死ぬ時なぜ仰向け?調べてみたら、セミの寿命は1週間よりも長い!?説が浮上」2024年10月9日,2026年7月29日閲覧。
  7. Papadopoulos, N. T., Carey, J. R., Katsoyannos, B. I., Kouloussis, N. A., Müller, H.-G., & Liu, X. (2002). Supine behaviour predicts the time to death in male Mediterranean fruitflies (Ceratitis capitata). Proceedings of the Royal Society of London. Series B: Biological Sciences, 269(1501), 1633–1637. DOI: 10.1098/rspb.2002.2028.
  8. Tower, J. (2023). Markers and mechanisms of death in Drosophila. Frontiers in Aging, 4, Article 1292040. DOI: 10.3389/fragi.2023.1292040.
  9. 産業技術総合研究所.「セミの共生菌は冬虫夏草由来――寄生関係から共生関係への進化を実証」2018年6月12日,2026年7月29日閲覧。
  10. Matsuura, Y., Moriyama, M., Łukasik, P., Vanderpool, D., Tanahashi, M., Meng, X.-Y., McCutcheon, J. P., & Fukatsu, T. (2018). Recurrent symbiont recruitment from fungal parasites in cicadas. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 115(26), E5970–E5979. DOI: 10.1073/pnas.1803245115.
  11. Hepler, J. R., Cooper, W. R., Cullum, J. P., Dardick, C., Dardick, L., Nixon, L. J., Pouchnik, D. J., Raupp, M. J., Shrewsbury, P., & Leskey, T. C. (2023). Do adult Magicicada (Hemiptera: Cicadidae) feed? Historical perspectives and evidence from molecular gut content analysis. Journal of Insect Science, 23(5), 13. DOI: 10.1093/jisesa/iead082.
  12. U.S. Department of Agriculture, Agricultural Research Service. “Do Adult Cicadas Actually Feed on Anything?” October 18, 2023. Accessed July 29, 2026.
  13. 千葉県立中央博物館.「セミヤドリガ」2006年8月18日,2026年7月29日閲覧。
  14. 千葉県立中央博物館 生態園.「生態園の自然 20230813_01:セミヤドリガ幼虫」2023年8月13日,2026年7月29日閲覧。
  15. Liu, Y., Yang, Z., Zhang, G., Yu, Q., & Wei, C. (2018). Cicada parasitic moths from China (Lepidoptera: Epipyropidae): morphology, identity, biology, and biogeography. Systematics and Biodiversity, 16(4), 417–427. DOI: 10.1080/14772000.2018.1431319.
  16. 中尾舜一.『セミの自然誌』中公新書,中央公論社,1990年。
    ※セミ成虫寿命に関する従来見解の文脈資料として、国立国会図書館レファレンス協同データベース内で引用されています。
  17. 七尾純.『しぜんたんけん(13)セミ』国土社,1986年。
    ※網を張った飼育条件で30日以上生存する例の出典として、国立国会図書館レファレンス協同データベース内で引用されています。
  18. 七尾純.『アブラゼミ』カラー自然シリーズ4,偕成社,1977年。
    ※児童書における「1週間から2週間」記述の確認資料として、国立国会図書館レファレンス協同データベース内で引用されています。
  19. 佐藤有恒 写真,橋本洽二 文.『アブラゼミ:ニイニイゼミ』カラーアルバム 昆虫,誠文堂新光社,1994年。
    ※児童書における「2〜3週間」記述の確認資料として、国立国会図書館レファレンス協同データベース内で引用されています。

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