「ペット」そのものではないが、必要な土台はあった
ただし研究者たちは、これらを人間と同じ意味でのペット飼育と呼ぶことには慎重です。
人間のペット飼育には、特定の動物との長期的な関係や、継続的な世話などが伴います。
これに対して、今回集められた事例の多くは一時的であり、サルが相手を「自分のペット」と認識していたかどうかも分かりません。
またチームは当初、霊長類が赤ちゃんの動物を特に好むと予想していました。
しかし実際には、友好的な交流が幼い個体に偏る傾向は確認されませんでした。
つまり異種への親しみは、単に「赤ちゃんがかわいい」という反応だけでは説明できず、相手との行動の相性、互いの寛容さ、社会的な好奇心などが重要なのかもしれません。
一方で、すべての交流が優しいものだったわけではありません。
好奇心や世話らしい行動が乱暴な扱いに変わり、相手の動物が死亡した事例も13件ありました。
異種の動物に関心を持つことと、相手の安全や気持ちを正しく理解できることは、別の能力なのです。
この研究が発見したのは、「サルも人間と同じようにペットを飼う」という完成された習慣ではありません。
むしろ、別種に近づく好奇心、相手を受け入れる寛容さ、一緒に遊ぶ能力、そして世話をする傾向といった、ペットとの関係に必要な「心の土台」です。
人類は進化の途中で突然動物を愛し始めたのではなく、祖先から受け継いだ社会性を少しずつ種の境界の外へ広げ、その先に現在のペット文化を築いたのかもしれません。
ただし今回のデータには、珍しく人目を引く事例ほど記録されやすいという偏りがあります。
今後、長期的な野外調査で異種間交流を体系的に記録できれば、私たちが動物を友人や家族として迎えるようになった進化の道筋が、さらに鮮明になるでしょう。































