楽しい気分は曖昧な笑顔の見え方を変えるのか
表情を読み取る力は、相手の感情を理解し、信頼関係を築くうえで欠かせません。
なかでも笑顔は、相手がポジティブな感情を抱いていることを伝える大切な手がかりです。
相手の笑顔を読み取ったうえで判断したり行動したりすることは、良い関係を生み出し、維持していくために重要でしょう。
しかし、私たちは表情をカメラのように客観的に、いつも同じように見ているわけではありません。
心理学では、自分の現在の気分と一致する情報を知覚したり思い出したりしやすくなる「気分一致効果」が知られています。
そのため、楽しい気分のときには、曖昧な顔からポジティブな感情を読み取りやすくなる可能性があります。
ただし、満面の笑みなら、多くの人が気分に関係なく簡単に見分けられます。
そこで研究チームは、無表情に近い「かすかな笑顔」を使い、コメディによって生じた明るい気分が表情の判断に影響するかを調べました。
実験には18~24歳の成人53名が参加しました。
参加者は別々の日に、約20分間のコメディ動画と、感情を大きく動かしにくい天気予報動画の両方を視聴しました。
映像の前後には、その時点の活気や不安、疲労などを質問紙で測定しました。
その後、無表情の顔と笑顔または悲しい顔を混ぜ合わせるモーフィング処理によって、感情の強さを段階的に抑えた顔画像を提示しました。
顔にはマスクありとマスクなしの2条件があり、参加者は表情を「ポジティブ」「中立」「ネガティブ」の3択で判断しました。
その結果、天気予報を見た後と比べて、コメディを見た後には活気と親しみやすさが高く、怒り、混乱、疲労、緊張・不安が低くなりました。
ただし、「抑うつ・落ち込み」には有意な差がありませんでした。
また、マスクをしていない顔のかすかな笑顔では正答率が上がりましたが、悲しい表情やマスクをした笑顔では同じ変化が確認されませんでした。
より詳細な結果と、その理由を次項で見ていきます。

































