なぜ男性は、忙しくなると黙ってしまうのか

なぜ、答えない男性がこれほどいたのか。研究者たちは、大きく2つの可能性を挙げています。
一つは、他の作業に気を取られすぎて、質問がそもそも耳に入っていなかった、という説です。
頭が目の前の料理や探しものでいっぱいになり、スピーカーの声がすり抜けてしまった、というわけです。
もう一つは、会話は後回しでいい、と判断して意識的に切り捨てた、という説です。
ただ先にも触れたように会話以外の4課題の成績は、男女で変わりませんでした。
そうなると、男性が会話を犠牲にしてまで他に集中してたどり着いた成績は、会話を続けながらこなした女性と、同じだったことになります。
言いかえれば、男性は女性と同じ成績を出すために、より多くの余力を注ぎ込んでいたのかもしれないのです。
論文を書いたサメイタット夫妻はこの点について、女性はもともと人と関わる場面でよく言葉を交わす傾向がある。
だから負荷がかかっても、会話が最後まで手元に残りやすいのではないか、との考えを示しています。
もっとも本研究は、マルチタスク実験やその観察結果の分析が主であり、その背後にある生物学的な仕組みまでは踏み込んでいません。
加えて、参加者は英国で集った人々であり、別の年齢層や文化、あるいは現実の双方向の会話でも同じ差が出るのかは、今後の課題として残されています。
それでも今回の研究によって、マルチタスク中の男女で違っていたのは、処理できる量や処理の質ではないことが示されました。
違っていたのは、余力が足りなくなったとき、男性のほうが落としやすかった部分でした。
そして皮肉だったのは、男性が手放したその部分が、よりによって外からいちばん目につく「会話」だった、ということです。
黙ったその姿が、まわりの目には「余裕がない人」と映ってしまい評価の低下が起きたのです。
長いあいだ「女性はマルチタスクで優れている」と信じられてきた、その思い込み。
正体は案外、こんな小さな一点だったのかもしれません。忙しさのただ中でも、会話への返事を続けられるかどうか。ただ、それだけの差だったのです。
ですから、もし次にマルチタスク中の男性に話しかけて、返事が返ってこなくても、どうか慌てないでください。
それは、あなたへの関心が薄れたからではなく、ただ今、手いっぱいなだけなのかもしれないのですから。

































