2000年越しの「5つの定説」が、次々と崩れた

なぜ脇の下や足の裏ばかりがくすぐったいのか。
この問いは、実は古代ギリシャの哲学者アリストテレスの時代からずっと議論されており、あのダーウィンも考えていたことが知られています。人類最高峰の頭脳たちが、くすぐったさという「たかが」の前で本気で悩んできたのです。
そうして残されたのが、現在も語られる5つの説です。
皮膚が薄い場所だからという「皮膚の厚さ説」、触覚の神経が密集しているからという「触覚感度説」、攻撃されると致命傷になりやすい急所だからという「弱点防御説」、性感帯と重なるからという「快感説」、そしてダーウィンが唱えた「普段あまり触れられない場所だからくすぐったい」という「接触頻度説」です。
どれも直感的にはもっともらしく聞こえますが、驚くべきことに、これらの説がくすぐったさの全身データと実際に突き合わせて検証されたことは一度もありませんでした。今回の研究は、その初めての本格的な一斉検証でもあったのです。
結果は、大方の予想を裏切るものでした。5つのうち4つが、データの前であっさりと沈んでいったのです。
まず「皮膚の厚さ説」。唇やまぶたは体のなかでも特に皮膚が薄い場所ですが、くすぐったさの上位常連にはまったく顔を出しません。
次に「触覚感度説」。手や手のひらは触覚の神経がぎっしり詰まった高感度エリアですが、くすぐったい場所としてはむしろ鈍い部類でした。
「弱点防御説」も、急所の目安として動脈の太さと照合すると有意な関連は見られませんでした。「快感説」もまた、参加者自身が「触れられて心地よい場所」として塗った地図とはほとんど重なりませんでした。
シオン氏は「よくある説明のいくつかは、データに合致しません」と述べています。
4つの説が沈んだあと、ただひとつデータと一致したのがダーウィンの「接触頻度説」でした。
自分自身でも他人からもめったに触られない場所ほど、くすぐったさが強い傾向がはっきりと確認されたのです。
では、触られないことがなぜくすぐったさを生むのでしょうか。
研究チームが挙げるのは「予想外」という要素です。
日頃から触れられている場所への接触は、体にとって想定内の出来事にすぎません。ところが脇の下や足の裏のように、普段ほとんど触れられない場所に何かが触れると、体はそれを予期していないのです。
この不意打ちが、あの強い驚きの反応を引き出しているのではないか——そう考えると、くすぐったさの正体は「予想外の接触への驚き」だったということになります。

































