なぜ性的興奮すると「自分に都合のいい情報」を重視してしまうのか
では、なぜ性的に興奮すると、セクシーな服装の影響が強くなるのでしょうか。
研究チームが注目しているのが、人間の現在の欲求が、目の前の情報の重要性そのものを変えてしまう可能性です。
たとえば空腹のときには食べ物に関する情報が普段より魅力的に感じられるように、性的に興奮しているときには、性的な欲求と一致する情報の重要性が高まる可能性があります。
今回の場合、「セクシーな服装」は男性自身の性的な欲求と一致する情報です。
一方で、「明確に拒絶する表情」は、その欲求と食い違う情報になります。
その結果、性的興奮時には、自分の期待と一致する服装の影響力が強まり、反対に拒絶的な表情が最終的な判断に与える重みが相対的に小さくなった可能性があります。
研究者らは、自分自身の性的な欲求を相手にも投影し、「自分が相手を求めている」という状態が「相手も自分に関心を持っているのではないか」という判断に影響する可能性についても考察しています。
また、この傾向にはかなり大きな個人差もありました。
質問紙による分析では、自分には性的欲求を満たしてもらう権利があると考える「性的権利意識」が強い参加者ほど、性的興奮によって服装に沿った判断が増えやすい関係がみられました。
さらに追加の分析では、自分の性的欲求を優先したり、相手を自分の目的のために利用したり、性的な衝動を抑えにくかったりする傾向が強い男性ほど、性的興奮によって服装で判断を引っ張られやすくなる傾向がみられました。
ただし、この研究には注意すべき点もあります。
まず、この実験では実際に女性と会話したり誘ったりする場面を観察したわけではなく、静止画像を見て「どちらが自分に性的な関心を示していそうか」を判断してもらっています。
そのため、今回の結果から「性的に興奮すると現実の女性の拒絶を無視して行動する」とまで結論することはできません。
また、「性的興奮を誘発する前の課題→エロティックな音声→性的興奮後の課題」という割と時間と手間のかかる実験をしているため、参加者の疲労などが判断に影響した可能性も除外できません。
実際、実験の後半では回答速度が低下する参加者も増えており、研究者らは疲労や退屈などが影響した可能性も指摘しています。
さらに参加者は比較的高学歴なドイツ語話者を中心とするオンラインサンプルだったため、異なる文化や社会環境ではどうなるかの検証も必要です。
それでも今回の研究は、性的に興奮した状態では、女性のその場の反応を示す表情よりも、性的に魅力的な服装が判断に入り込みやすくなる可能性を、行動実験によって示しています。
なぜ一部の男性がしつこく女性を誘ったり、手を出してしまうのかという疑問に対して部分的に回答していると言えるでしょう。

































