LUCAの前に多様な生命が存在した

では、生命は温泉で生まれたのでしょうか。
生命が生まれた場所については、温泉のほかにも、陸の上で水たまりが干上がったり満たされたりをくり返す場所など、いくつもの候補があり、今も議論が続いています。
ですが研究チームの計算は、どれか一つに肩入れしないまま、どの候補地にも欠かせない「穏やかな温度が長く続く」という状態が出現する時期を割り出すことに成功しました。
また最適期の約43億3000万年前は、遺伝子から見積もられた現在のすべての生き物の共通祖先(LUCA)の登場(約42億年前)より、1億3000万年ほど前にあたり、順番としては、ぴたりと合います。
地球化学の側から別の方法で計算した研究も、RNAが生まれた時期を約43億年前としており、今回の最適期とよく一致します。
さらに研究者たちはLUCAの前にはすでに長い進化の歴史があり、RNAだけで動く生命、RNAとタンパク質が手を組んだ生命、DNAを使い始めたばかりの生命など、多様な集団がLUCAより前に存在していた可能性があると考えています。
そうした多様な存在の中から、最終的に私たちへつながるものとして選ばれたのがLUCAに過ぎないというわけです。
LUCAが現れた42億年前ごろには、地下300メートルの温度は25〜50℃ほどに落ち着き、より複雑な生命へと進化していく準備が整った世界になっていたと論文は述べています。
では穏やかになった地球で、材料はどうやって生命の形にまとまったのでしょうか?
論文が挙げる候補の一つは、皮肉にも、また衝突です。
大きな衝突がえぐったクレーターは、雨水をためる器になります。
そこへ周りの岩から洗い出された有機物や、落ちてきた天体そのものが持ち込んだ物質が集まります。
器は乾いては雨で満ち、乾いては満ちを繰り返し、そのたびに中身を煮詰めていきます。
さらに大きな衝突は、天体の金属の芯を砕いて鉄をまき散らし、その鉄と水の反応で生まれた水素が、核酸のもとになる窒素化合物(アンモニア)ができる条件を一時的に整えます。
44億年前以降の穏やかな時期は、そうした条件を使える時期とちょうど重なっていた、と論文は指摘しています。
一方で、RNAワールドがどれくらい続き、いつDNAの時代へ移っていったのかまでは、今回の計算でも絞り込めていません。
ただ、始まりの時期が狭い幅で見えてきたことで、衝突の嵐の終わりからRNAワールド、そしてLUCAへと続く生命の最初の数億年を、一本の年表の上に並べられるようになりました。
中心の年代は従来の見積もりと一致しつつ、不確実性の範囲は大幅に狭くなったとアブラモフ氏は説明しています。

























