カギは骨の中の「押されたことを感じる」細胞

では、すねの骨への刺激は、どうやって脳まで届いたのでしょうか。
研究チームが注目したのは、骨の中にある「骨細胞」と、その細胞が持つ「PIEZO1(ピエゾワン)」という分子です。
PIEZO1は、機械的な力を感じ取るセンサーの役割を持つチャネル(細胞の膜にあって物質を通す通り道)です。
骨細胞からPIEZO1を取り除くと、骨を押すことで得られていた良い効果は打ち消されてしまいました。
一方で、骨を押したマウスから採った血清(血液の液体部分)を使うと、同じ効果が再現されました。
これは、骨への刺激の効果を担う何かが、血液の中に含まれていることを示しています。
詳しく調べると、骨細胞は機械的な刺激を信号に変え、IL-1R2、APOL11a、HSP70といった物質を直接分泌していました。
さらに骨細胞は、間接的に、血清中のBDNF、PF4、ドーパミンの量も増やしていました。
そしてこれらの物質は、互いに力を合わせるように働いて、外傷性脳損傷から脳を守っていたのです。
一つの物質の手柄ではなく、複数の物質によるチームプレーだったわけです。
研究チームはこれらの結果から、骨と脳を結ぶ「骨-脳軸」が存在すると結論づけています。
骨には物質を出して体の別の場所に働きかける「内分泌」の働きがあり、その働きを機械的な力で調節することで、けがのあとの脳の修復を高められるというのです。
ただし今回の結果はマウスとブタで得られたもので、論文の要旨には人での結果は示されておらず、人の脳のけがにも同じことが当てはまるかは確認できません。
私たちは骨を、体を支える硬い柱だと思いがちです。
しかし今回の研究が描き出したのは、押されたことを感じ取り、傷ついた脳に向けて助けを送り出す、意外とおしゃべりな骨の姿でした。
とはいえ、頭をぶつけた人のすねをいきなりぎゅっと押し始めたら、ただの不審な人なので、今はまだやめておきましょう。



























