「鳥の目」で見たチョウの羽に、何が起きていたのか?

共著者のジョリオン・トロシアンコ氏が最初のスロー映像をモデルに通すと、チョウは上へ飛んでいるのに、羽には下向きの動きが強く光って表れていました。
同氏は、最初はプログラムのミスで上下が入れ替わったのではないかと疑って確かめたものの、やがてこれが襲ってくる天敵を混乱させる完璧な方法になると気づいたと語っています。
つまり鳥の目をまねたモデルの中で、床屋のサインポールとよく似た錯覚が、チョウの羽に起きていたのです。
カギを握るのは、チョウの羽ばたき方です。
チョウの羽は飛ぶときに形を変え、打ち上げるときには左右の羽がぴたりと合わさり、打ち下ろすときにははがれるように離れます。
そのため羽ばたくたびに、しま模様の角度がずれて、あちこちの向きを指すようになります。
ここに先の読めない飛び方が加わることで、うその動きの手がかりが強まり、チョウが本当に進む向きは隠されてしまうとチームは説明しています。
ハンコック氏によると、この錯覚は、天敵が獲物をつかもうと最後の一撃に踏み切る数十ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)の間の狙いを狂わせるといいます。
その瞬間にはもう進路を変える余裕がないため、鳥などの天敵はただ空振りしてしまうことが多いと、同氏は話しています。
トロシアンコ氏によると、この錯覚によって、天敵が狙いを完全に外したり、後ろの羽や尾のように、つかまれても致命傷になりにくい部分をつかんだりすることにもつながるといいます。
チームは、この錯覚がほかのチョウにも広く見られるのかも調べました。
ヨーロッパにすむおよそ400種のチョウを再現したシミュレーションでは、動きの錯覚を生む模様が広く見つかりました。
種どうしの血縁の近さ・遠さを考えに入れた分析でも、この作戦が進化の中で広く使われてきたことが示されました。
さらに100人のボランティアに「天敵」役になってもらい、タッチスクリーンの上を飛ぶ仮想のチョウを捕まえてもらう実験も行われました。
その結果、コンピューターのモデルが出した予想は、人の「狩り」でも裏づけられました。
チョウの進む向きに沿ったずれで比べると、錯覚が最も強いチョウと最も弱いチョウとでは、人がねらった位置の中心が、チョウの平均的な体長のおよそ38%ぶん違っていたのです。




















