コンピューターの中で「進化」させた羽は、どんな模様になったのか

またチームは、でたらめな模様から出発して、5万通りを超える羽の模様をコンピューターの中で「進化」させました。
動いているときに最も混乱を生む模様を選び続けたところ、できあがった模様は、自然のチョウの羽と驚くほどよく似たものになりました。
このことから、目の錯覚はチョウの羽の進化を形づくってきた大きな力の一つである可能性があります。
錯覚を強める模様は1通りではなく、前の羽のくっきりした縦じま、1本の縦の帯、羽のふちの中で色がはっきり分かれる模様など、いくつもの道があることも分かりました。
一方、真っ白な羽は、前へ進む動きの信号を最も強く出します。人は白のようにくっきりした物の速さを実際より速く見積もりやすいため、これも見誤りにつながりえます。
こうした働きは、異性へのアピールや体温の調節といった模様のほかの役目とぶつかるものではなく、むしろ補い合っている可能性があるといいます。
ただしチームは、今後は羽の裏側の模様や、もっと多様な飛び方、見る角度や距離、背景の違いまで考えに入れる必要があるとしています。
それでも、こうした条件を加えても全体の結論は変わらず、細かな違いが見えてくるだけだろうとチームは考えています。
なお今回、「天敵」の役を務めたのは、鳥の目をまねたモデルと人だったという点も頭に入れておく必要があります。
トロシアンコ氏は、動きで相手を惑わせる仕組みは、鳥の羽ばたく翼やトカゲや魚の尾の動きなど、自然界にこれまで考えられていた以上に広くあるだろうと話しています。
チームは、この知見が、ロボット工学で使う、生き物にならった動きの検出技術の改良などに役立つ可能性も挙げています。
止まっているときには身を隠せる模様も、動き出せば見つかってしまいます。
目立つ羽を広げて飛ぶチョウは、隠れるのではなく「見せて惑わせる」という、空中でのまったく別の守り方を身につけたのかもしれません。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(「透明な羽をもつチョウチョ」ガラスのような羽の作り方が明らかに)
ふらふらと頼りなく見えるあの飛び方こそが、長い進化の中で磨かれた守りの作戦の一部だったと考えると、チョウの見え方も少し変わってきます。




















