薬が効きにくい統合失調症という難題

統合失調症の治療では、薬が使われています。
ところが、薬を使ってもはっきりとした改善が得られないケースがあり、これは「治療抵抗性統合失調症」と呼ばれています。
治療抵抗性統合失調症は薬への反応が限られているため、今も医療の現場で大きな課題となっています。
薬だけでは届かないなら、別の方向から手を貸せないか。
そうした発想から候補に挙がってきたのが、tDCSです。
tDCSは、頭の表面に電極を置き、そこから直流の電流を流すという方法です。
薬の代わりではなく、薬による治療に追加する「補助的な治療」として期待されてきました。
ただし、これまでの研究では結果がそろっておらず、本当に効果があるのかははっきりしていませんでした。
そこで今回の研究では、電極を前頭部と側頭部、つまりおでことこめかみのあたりに置く「前頭・側頭tDCS」に絞って、その短期的な効果を確かめることにしました。
調べたのは、症状の重さと、患者さん自身の生活の質の2つです。
試験に参加したのは、治療抵抗性統合失調症で入院している患者45人でした。
患者は、本物の刺激を受けるグループと偽の刺激を受けるグループに、くじ引きのような方法で振り分けられました。
さらに、患者と研究者の両方がどちらのグループかを知らないまま進める「二重盲検」という形がとられました。
最後まで試験を終えたのは39人で、本物の刺激のグループが20人、偽の刺激のグループが19人でした。
5日間の電気刺激で、症状はどう変わったのか?

本物の刺激のグループは、1日2回、5日連続でtDCSを受けました。
一方の偽の刺激では、30秒ほど電流を上げ下げするだけで、残りの19分間は電流を止めていました。
つまり偽の刺激は、ごく短い時間だけ電流を上げ下げして本物らしく見せかけ、残りの時間は電流を止めているという「ふり」の刺激です。
症状の重さは、統合失調症の症状を点数で表す「陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)」で測りました。
生活の質は、世界保健機関(WHO)が作った簡易版の質問票で調べています。
分析では、時間を追ったデータの変化を2つのグループで比べ、さらに別の統計の方法でも同じ結果になるかを確かめました。
その結果、本物の刺激を受けたグループは、偽の刺激のグループに比べて、PANSSの合計点がより大きく下がっていました。
症状の種類ごとの点数でも、同じように本物の刺激のほうがより大きく下がっていました。
この差は、偶然では説明しにくいほどはっきりしたものでした。
薬が効きにくい人たちでも、短い期間の電気刺激で症状が和らいだと言えそうです。
以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(脳への電気刺激を制御チップで自動化し、うつ状態を解消させる技術が登場)
一方で生活の質については、良くなる傾向は見られたものの、はっきりした差とまでは言えませんでした。
症状の点数が下がっても、それが毎日の暮らしの実感にまで届いたかどうかは、今回の試験だけでは分からないということです。
また、今回確かめられたのは、あくまで短期的な効果です。
研究チームは、この結果を確かなものにするには、より大きな規模で、その後の経過も追いかける試験が必要だと述べています。
今回の参加者は45人(最後まで試験を終えたのは39人)だったため、より多くの患者でも同じ結果になるかどうかを、これから確かめていく段階です。
「薬が効かない」と聞くと、もう打つ手が残っていないように感じてしまいます。
しかし今回の研究は、薬とは別の方向から症状に働きかける道に、まだ探る価値があることを示しています。






















家から出る前にその電流を頓服的に