「猫」と「幸せ」の意外なつながり、93か国で調査
「猫」と「幸せ」の意外なつながり、93か国で調査 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部
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「猫」と「幸せ」の意外なつながり、93か国で調査

2026.10.07 08:00:00 Wednesday

仕事から帰ると、玄関で猫がしっぽをピンと立てて出迎えてくれて、それだけで一日の疲れが少し軽くなる人もいるでしょう。

一方で、国ごとの「幸福度」の話になると、話題の中心はたいていお金や医療、社会の支えといった言葉です。

しかし、国の幸せはお金のような社会や経済の条件だけでなく、生き物や環境に関わる条件ともつながっているのではないか、と考える研究者もいます。

そこで今回ある研究チームが、93カ国を対象に、国の幸福度と「人口あたりの猫の数」、さらにトキソプラズマ(寄生虫の一種)という聞き慣れない相手への感染との関係を調べました。

猫の多い国と少ない国では、幸せの度合いにどんな違いがあったのでしょうか。

研究の詳細は、2026年9月30日付で学術誌『PLoS ONE』に掲載されました。

Wealth, health, cats and Toxoplasma gondii: An ecological correlational study of subjective well-being across 93 countries (PLoS ONE) https://doi.org/10.1371/journal.pone.0357911
Wealth, health, cats and Toxoplasma gondii: An ecological correlational study of subjective well-being across 93 countries https://doi.org/10.1371/journal.pone.0357911

93カ国の「猫の数」と「幸せ」をどう比べたのか

93カ国の「猫の数」と「幸せ」をどう比べたのか
93カ国の「猫の数」と「幸せ」をどう比べたのか / Credit: PLOS One

この研究は、国ごとに公開されているデータを集めて、国どうしを並べて比べるタイプの調査です。

つまり、猫を飼っている一人ひとりが幸せかどうかを確かめたのではなく、国単位の数字の並び方を見た研究です。

国の幸福度には、2025年版の「世界で最も幸せな国」ランキングの点数を使いました。2022〜2024年の3年間の平均をもとにした点数です。

この点数は、ギャラップの世論調査データを、豊かさ・社会の支え・健康でいられる年数・人生を選ぶ自由・気前のよさ・汚職の感じ方の6つの面から分析して出したものです。

猫の数は、国ごとの飼い猫の推定数を人口で割り、人口1万人あたり何匹いるかに直してそろえました。

あわせて、1人あたりGDP(国の豊かさの目安)、医療にかけるお金が国の経済の何%か、そして世界銀行による4段階の所得の区分も集めました。

もう1つの柱が、トキソプラズマ・ゴンディ(以下トキソプラズマ)です。

トキソプラズマは妊娠中に母親からおなかの赤ちゃんへうつることがあるため、妊婦は日常的に検査を受けています。

研究チームはこの妊婦の検査データを、国全体でどれくらいの人がトキソプラズマに触れているかの目安として使いました。

検査では、最近の感染の目印になるIgM(抗体の一種)と、以前からの感染の目印になるIgG(同じく抗体の一種)を分けて見ています。

研究チームは事前に、「豊かな国ほど幸せで、トキソプラズマへの感染が多い国ほど幸せではない」という予想を立てていました。

以前ナゾロジーではこういう記事も紹介しています(寄生虫トキソプラズマは感染したヒトを魅力的にして、モテやすくする⁈)

では、猫の多さはこの中でどんな位置にあったのでしょうか。

猫の多い国ほど幸せだったのか?

猫の多い国ほど幸せだったのか?
猫の多い国ほど幸せだったのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

結果を見ると、人口あたりの猫が多い国ほど、国の幸福度も高いという強いつながりが見られました(相関係数0.62)。

ただし、幸福度ともっと強く結びついていたのは国の豊かさで、1人あたりGDPや所得の区分は、幸福度とかなり強いつながりを示しました(相関係数0.80、0.78)。

医療にかけるお金の割合も、中くらいの強さで幸福度とつながっていました(相関係数0.35)。

その反対に、妊婦の検査データで、最近の感染の目印となるIgMの陽性率が高い国ほど幸福度は低く、強めの逆向きのつながりが見られました(相関係数−0.54)。

以前からの感染の目印であるIgGの多さも、中くらいの強さで幸福度の低さとつながっていました(相関係数−0.33)。

ここで気になるのは、猫の多い国は豊かな国でもあったという点です。

実際、猫の多さはGDPや所得の区分とかなり強く結びついていました(相関係数0.79、0.77)。

そうなると、「猫が多い国は幸せ」に見えるのは、単に「豊かな国が幸せで、豊かな国に猫が多い」だけなのかもしれません。

そこで研究チームは、猫の多さ、医療にかけるお金、GDP、所得、トキソプラズマへの感染をすべて一緒に入れて、幸福度との関係を見比べる分析を行いました。

すると、豊かさなどを一緒に考えに入れても、人口1万人あたりの猫の数と、最近のトキソプラズマ感染の多さが、幸福度と最も強く結びつく2つの要素として残ったのです。

研究チームはさらに、猫の多さと幸福度のつながりの間に、最近のトキソプラズマ感染の多さがはさまっていないかも調べています。

研究チームはこうした結果から、国の幸せには、お金のような社会・経済の条件と並んで、生き物や環境に関わる条件も関わっている可能性があると考えています。

猫を増やせば、国は幸せになるのか?

猫を増やせば、国は幸せになるのか?
猫を増やせば、国は幸せになるのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

もちろん、この研究には注意すべき点もあります。

これは国単位の数字を比べた相関の研究で、猫を増やせば国が幸せになるという原因と結果を示したものではありません。

また、93カ国はすべてのデータがそろう国を選んだもので、世界からくじ引きのように選んだわけではありません。

トキソプラズマの広がりも妊婦の検査データで代わりに見積もったもので、偏りが入るおそれがあると研究チーム自身が述べています。

さらに国の数が限られているため、弱いつながりは見落とされている可能性があり、はっきりした差が出なかった結果は慎重に受け止める必要があるとしています。

研究チームは今後、時間を追って調べる研究や、さまざまな分野を合わせた研究で、こうしたつながりの仕組みを明らかにすべきだと述べています。

国の幸せを測るとき、私たちはついお金や医療の数字ばかりに目を向けがちです。

しかし今回の結果は、人のそばで暮らす小さな生き物や、目に見えない感染の広がりまでもが、その国の暮らしを映す手がかりになりうることを示しています。

次に幸福度のランキングを眺めるときは、その国の路地や窓辺でくつろぐ猫たちの姿も、少しだけ思い浮かべてみるとよいかもしれません。

ちなみに我が家の幸福度は、猫がキーボードの上で寝ていない時間の長さと、かなり強くつながっている気がします。

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