深海で青く光る「長い脚の巨人」2種を発見
深海で青く光る「長い脚の巨人」2種を発見 / Credit: Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers (2026). DOI: 10.1016/j.dsr.2026.104735″ width=”8
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深海で青く光る「長い脚の巨人」2種を発見

2026.10.09 23:00:00 Friday

太陽の光がまったく届かない深い海の底にも、暗闇を照らす「光」が存在します。

深海には、自分の体で光をつくる生き物がたくさん暮らしているのです。

そんな深海で今回、長い脚をもつ巨大な「ウミグモ」の仲間2種が光る姿がとらえられました。

けれども、ウミグモの光についてはこれまで謎が多く、その光がどこで、どのように生まれているのかは分かっていませんでした。

では、深海のウミグモは、いったいどうやって光を灯しているのでしょうか。

ベルギーのルーヴァン・カトリック大学らにより、ウミグモの光の仕組みに初めて迫った研究が報告されています。

研究の詳細は、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学らにより、2026年8月4日付で学術誌『Deep Sea Research Part I Oceanographic Research Papers』に掲載されました。

Meet the long-legged giants that light up the deep ocean (Phys.org) https://phys.org/news/2026-10-legged-giants-deep-ocean.html
Abyssal glowing sea spider, first insight into pycnogonid luminescence https://doi.org/10.1016/j.dsr.2026.104735

深海の暗闇で光る「長い脚の巨人」

深海の暗闇で光る「長い脚の巨人」
深海の暗闇で光る「長い脚の巨人」 / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

今回の主役は、コロッセンデイス・タスマニカとコロッセンデイス・ミノールという、2種の巨大なウミグモ(海にすむ、長い脚をもつ生き物)です。

どちらも、オーストラリア東岸沖の、太陽の光が届かない深い海から採集されました。

研究チームは深海調査の中で、タスマニカ7匹とミノール2匹を、水深1006〜4977メートルの海から引き上げています。

実は、光るウミグモの報告は、これまでにもいくつかありました。

たとえば19世紀の終わりには、インド洋で採集されたウミグモの体の下側に沿って、青い光が見えたという記録が残っています。

しかし、それがウミグモ自身の光なのか、深海のサンゴなど光る生き物にこすれて、光るぬめりがくっついただけなのかは分かりませんでした。

深海には、発光する(自分の体で光をつくる)生き物が数多くいる一方で、ウミグモの発光については、ほとんど何も分かっていなかったのです。

そこで研究チームは、まず船の上で、ウミグモが本当に自分で光をつくっているのかを確かめることにしました。

ウミグモを暗い部屋に置き、脚を軽くつまんだり、薬品で刺激したりして、その反応を見たのです。

そして光が出れば撮影し、明るさや色の成分を測り、脚の部分ごとに反応がどう違うかも調べました。

さらに研究室に戻ってからは、凍らせた脚から取り出した液で化学的な試験を行い、薄く切った組織を顕微鏡でのぞいています。

では、暗闇の中で、ウミグモの脚にはいったい何が起きたのでしょうか。

ウミグモの光は、脚のどこで生まれていたのか?

ウミグモの光は、脚のどこで生まれていたのか?
ウミグモの光は、脚のどこで生まれていたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

詳しく調べられたのは、十分な数が採れたタスマニカのほうです。

暗い部屋で刺激を受けると、タスマニカの脚は深い青色に光り始めました。

その光は波長(光の色を決める波の長さ)が449ナノメートルの深い青で、光っていたのは脚だけでした。

しかも脚の先がいちばん明るく、胴体に近づくほど光は弱まっていました。

薬品で刺激したときの光は5〜10分ほど続いた一方、つまんで刺激したときの光は弱く、数秒から2分あまりで消えたといいます。

では、この光はどんな化学反応で生まれているのでしょうか。

光る生き物では、「ルシフェリン」と「ルシフェラーゼ」という2つの物質が組み合わさって光る仕組みがよく知られています。

ところが、この仕組みを確かめる定番の試験(温めたものと冷やしたものを使う試験)では、タスマニカの脚からはほとんど光が出ませんでした。

代わりに光を引き出したのは、過酸化水素や塩化カリウムといった薬品で、アドレナリンでは光りませんでした。

さらに、カタラーゼという酵素を使った試験や、フェントン試薬という薬品を使った試験でも光が出ました。

フェントン試薬の試験では、カルシウムを増やすほど光の反応が強くなりました。

このことから研究チームは、カルシウムやカタラーゼ、過酸化水素が光の仕組みに関わっている可能性があると考えています。

つまりタスマニカの光は、クラゲなどに見られる「発光タンパク質」(光を出すタンパク質)を使う仕組みに近いのではないか、というのです。

ただし研究チームは、この発光タンパク質の正体を分子のレベルで確かめるには、さらなる研究が必要だとしています。

もうひとつ興味深いのは、光がつくられている場所です。

顕微鏡で調べたところ、光は脚の中にある、腸に関わる細胞でつくられているとみられました。

このことから、光るのに必要な材料の一部を、ウミグモが食べ物から手に入れている可能性も考えられます。

一方で、そもそもなぜウミグモが光るのかという肝心の理由は、まだ分かっていません。

敵から身を守るためなのか、獲物をとるためなのか、それとも繁殖のためなのかは、今後の研究を待つ必要があります。

何もないように見える深海の暗闇も、実は小さな明かりがあちこちで灯る、にぎやかな世界なのかもしれません。

暗闇でスマホを探すたびに、自分の手が光ってくれたらと願わずにはいられません。

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