「最強のエルニーニョ」で海面水温が初めて「30℃超え」、観測史上最高に
「最強のエルニーニョ」で海面水温が初めて「30℃超え」、観測史上最高に / Credit: ClimateReanalyzer.org (
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「最強のエルニーニョ」で海面水温が初めて「30℃超え」、観測史上最高に

2026.10.11 21:00:00 Sunday

海水浴で沖のほうへ泳いでいくと、足もとの水が急にひんやりして、思わず引き返したくなることがあります。

広い海にも、いつも暖かい場所と、それよりずっと涼しい場所があります。

赤道に沿ってのびる太平洋もそのひとつで、西側には暖かい海水がたまり、中ほどの海はふだんずっと涼しいままです。

この暖かさの並び方が崩れると、世界の雨の降り方まで大きく変わってしまいます。

ところが今、その太平洋の中ほどで、これまでの観測には無かった事態が起きているといいます。

米英の気候学者たちが口をそろえて重く受け止める、その異変とは何なのでしょうか。

この話題の詳細は2026年10月8日に『Live Science』にて公開されました。

The central Pacific Ocean just broke a temperature record. Experts say it might signal a new kind of El Niño. (Live Science) https://www.livescience.com/planet-earth/rivers-oceans/the-central-pacific-ocean-just-broke-a-temperature-record-experts-say-it-might-signal-a-new-kind-of-el-nino

天気を左右する太平洋の「見張り場」

天気を左右する太平洋の「見張り場」
天気を左右する太平洋の「見張り場」 / Credit: ClimateReanalyzer.org (

異変の中身を知るには、まず「エルニーニョ」という現象をおさえておく必要があります。

エルニーニョは、赤道付近の太平洋の西側にたまった暖かい海水が、赤道に沿って南米のほうへ移っていくことで起こります。

すると世界の気温が押し上げられ、東アフリカや中国南部、アメリカ南部、赤道に近い南米の太平洋岸などで大雨や洪水が起きやすくなります。

反対に、インドネシアやフィリピン、アフリカ南部、南米北部などは干ばつに見舞われます。

エルニーニョは、何年かおきにくり返す自然の気候のリズムの「暖かい側」にあたります。今まさにその真っ最中で、勢いを増し続けています。

その進み具合を見張るために研究者が使っているのが、「ニーニョ3.4海域」と呼ばれる赤道太平洋の中部の海です。

範囲は北緯5度から南緯5度、西経120度から170度までです。

一方、オーストラリアの北東には「西太平洋暖水プール」と呼ばれる暖かい海水のかたまりがあり、この時期はとても高い水温になるのがふつうです。

ニーニョ3.4海域はこの暖水プールから遠く離れていて、ふだんの水温はずっと低めです。

また、エルニーニョの強さは、ふつう水温そのものではなく、その海域の平年の水温と比べてどれだけ高いかで測ります。

熱帯のほかの海と比べるやり方もあり、こちらなら温暖化で世界中の海が温まっている分の偏りを取り除けます。

ふだんは涼しい海に何が起きたのか?

ふだんは涼しい海に何が起きたのか?
ふだんは涼しい海に何が起きたのか? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

速報データによると、ニーニョ3.4海域の海面水温が、この海域の観測史上で初めて30℃を超えました。

この時期の海面水温が30℃を超えるのは、オーストラリア北東の西太平洋暖水プールではよくあることです。

つまり、ふだんは涼しいはずの太平洋の中ほどが、南の暖かい海に並ぶほど温まっているのです。

米カリフォルニア大学アーバイン校の地球システム科学者ジンイー・ユー氏は、これを「熱帯太平洋のこの部分としては、並外れて暖かい状態」だと述べています。

ただし今回の数字はまだ速報の段階で、ユー氏も「日々の値が観測データで確かめられれば、並外れた記録になる」と、確認を待つ姿勢を示しています。

英イースト・アングリア大学の気候学者ティモシー・オズボーン氏と、英エクセター大学の気候学者マット・コリンズ氏も、ともにこの記録を「非常に重要」と評しました。

とはいえ、先に触れたとおり、エルニーニョの強さは水温そのものではなく平年との差で測るのがふつうです。

そこで平年との差を見ると、最新の値でニーニョ3.4海域の水温は平年より3.34℃高く、なお上がり続けています。

ふつうのエルニーニョで平年より上がるのは最大でも1〜2℃ほどなので、今回はその上限を1℃以上も上回っている計算です。

ユー氏はこれを「並外れて大きい」とし、「スーパー・エルニーニョ」とも呼ばれる非常に強いエルニーニョが育ちつつあることを示していると話します。

オズボーン氏も、平年や熱帯のほかの海と比べる物差しで見ると、今回はすでに観測史上最強に近いと述べています。さらに強まるという予報を考えると、近いうちに過去の記録を超える可能性が高いといいます。

物差しによっては、この時期としてはもう記録を塗り替えているそうです。

今年のエルニーニョは、人間が引き起こした温暖化で海の水温が底上げされている分、さらに勢いが増しているといいます。

コリンズ氏によれば、水温はこの先数週間も上がり続け、11月か12月に山を迎えたあと、2027年に入って下がっていく見込みです。

予報では、平年との差が11月までに4℃に達する可能性もあるとされています。

オズボーン氏は、記録的な強さのエルニーニョは、雨の降り方などを決める大気の流れを大きくかき乱すため、非常に重い意味をもつと話します。

エルニーニョは「形」を変えつつある?

エルニーニョは「形」を変えつつある?
エルニーニョは「形」を変えつつある? / ※画像はイメージです。Credit: Generated by Codex (gpt-image), ナゾロジー編集部

世界は温暖化の重要な節目を越える瀬戸際にあるとされ、今回のような状態がこれからのエルニーニョの「当たり前」になるのかが気になるところです。

コリンズ氏は、平均すれば将来のエルニーニョは過去より極端になる可能性が高いとしつつも、年ごとのばらつきが大きいため、毎回が今回ほど記録的になるわけではないと話します。

オズボーン氏が心配しているのは、エルニーニョが来る前から、温暖化によってすでに極端な状態に近づいている地域があることです。

たとえば温暖化で乾燥が進んでいる地域が、エルニーニョのときに乾きやすい地域と重なれば、壊滅的な干ばつが起こりかねません。

同じように、雨が増えている地域がエルニーニョで雨が多くなる地域と重なれば、さらにひどい豪雨や洪水に見舞われるおそれがあります。

ただしオズボーン氏は、だからといって極端なエルニーニョが新しい「当たり前」になるとは限らないとも述べています。

これに対してユー氏は、変わりつつあるのは強さだけでなく、エルニーニョが起きる場所と続く長さかもしれないと考えています。

ユー氏の研究グループと共同研究者たちは、エルニーニョの強さに加えて、海のどこが温まるのか、どれくらい長く続くのかにも変化が起きていることを記録してきました。

ユー氏らは、エルニーニョには「東太平洋型」と「中央太平洋型」という2つのタイプが現れているという考え方を広めるのに一役買ってきた研究者でもあります。

昔の観測記録では東の熱帯太平洋が温まるタイプが多かったのに対し、ここ数十年は中央太平洋が温まるタイプがずっと目立つようになったといいます。

ユー氏は、エルニーニョが以前より長く続くようになっているとも付け加えています。

天気予報で今年の「エルニーニョ」の話を聞いたら、ふだんは涼しい太平洋のど真ん中が、速報値とはいえ、この時期のオーストラリア北東の暖かい海ではよくある30℃超えにまで達したことを思い出してみてください。

遠く離れた赤道の海の水温は、世界のどこかの大雨や日照りと、見えない糸でつながっているのです。

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