生き残った太陽系のその後と、壊れずにすむ条件
では、太陽が白色矮星になった時点で無事だった太陽系は、そのまま生き残るのでしょうか。
研究チームは、条件を変えた672回の計算の結末を、外からの邪魔なしでさらに30億年先まで追いました。
先ほどの標準の設定では、30億年以内に96%で惑星の並びが不安定になりました。
かたまりの放出を太陽の最後の段階だけに限った控えめな設定でも、83%が同じ結末を迎えています。
Aは、白色矮星ができてからの時間に対して、並びが安定なまま残った太陽系の割合を示した図です。色は1回に放り出すガスの量の違いで、実線は晩年を通して放り出した場合、破線は最後の段階だけに限った場合を表し、線が下がるほど崩れた太陽系が増えています。Bは、できあがった並びで隣り合う惑星がどれだけ離れていたかと、崩れ始めた時期の関係です。Credit: Batygin et al., The Astrophysical Journal Letters (2026)(CC BY 4.0)
この控えめな設定では、赤色巨星のうちに壊れる例は出ませんでしたが、行き着く先は変わりませんでした。
崩れ始める時期は、数百万年後から25億年より先まで、広くばらついています。
こうして外側の太陽系の寿命の見積もりは、100京年から、白色矮星ができて約10億年へと縮みました。
桁でいえば、10億分の1です。
これまでは近くを通る別の星が引き金になると考えられてきましたが、それを待つまでもありません。
太陽系は、先ほどの約1000億年の100分の1ほどの時間で、自分の内側の原因だけで崩れてしまうからです。
ただし、この結末には条件があります。
かたまりで放出しても、どの方向にも均等に飛び出す設定では、太陽系は30億年たっても安定したままでした。
かたまりが標準の約300分の1より細かい設定でも、不安定になった割合は2%以下にとどまっています。
つまり運命を分けるのは、ガスの粒がどれだけ粗く、偏って飛び出すかという一点です。
研究チームは、白色矮星の反動の観測を額面どおりに受け取るなら、粒は粗い側にあるとみています。
とはいえ、これはコンピューター上の計算で、反動の原因がかたまりの放出だという解釈に立った結果です。
太陽が本当にその粗さでガスを吐き出すのかは、この解釈が正しいかどうかにかかっています。
自転車ほどの速さの一押しが数千回重なるだけで、土星が去り、天王星と海王星が入れ替わるかもしれません。
ハッブル宇宙望遠鏡が2009年2月24日に撮影した土星で、4つの衛星が土星の手前を横切っています。Credit: NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA). Acknowledgment: M. Wong (STScI/UC Berkeley) and C. Go (Philippines) / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
見慣れた太陽系の図も、太陽の最期には描き直しになる可能性があるのです。
語呂合わせを覚え直すのは大変なので、太陽にはできるだけ静かに年を取ってほしいものです。
ここからは、白色矮星をもっと知りたい人へ
白色矮星とは、年老いた星が外側のガスを失ったあとに残る、小さくて重い星です
ハッブル宇宙望遠鏡が写した、夜空でいちばん明るい星シリウスAと、そのそばにある小さくかすかな連れの星シリウスBです。シリウスBは、代表的な白色矮星です。Credit: NASA, H.E. Bond and E. Nelan (Space Telescope Science Institute, Baltimore, Md.); M. Barstow and M. Burleigh (University / Wikimedia Commons(Public domain)白色矮星は、重さが太陽の8倍くらいまでの星が、星を光らせる核融合を終え、外側のガスをほとんど失ったあとの姿です。
半径は地球ほどしかないのに、重さは太陽に近く、典型的には太陽の約0.6倍あります。
小さく重いこの星の表面では、薄い外側の層が地球の表面の10万倍ほどの強い重力を受けています。
白色矮星の大部分は、炭素と酸素でできた中心核を持っています。
また、白色矮星の重さには上限があり、その値は太陽の約1.46倍です。
名前には「白色」とありますが、出す光の色は青白から赤まで幅があります。
赤色巨星が最後の段階で噴き出した外側のガスは「惑星状星雲」として光って見え、噴き出しがとぎれとぎれに起こるものもあります。
この「惑星状星雲」という名前は、小さな望遠鏡で見ていた頃に惑星のように見えた名残で、惑星とは関係がありません。
【よくある疑問】
Q. 白色矮星の温度はどのくらいですか?
A. 表面の温度は、できてすぐの頃に10万度ほどまで上がります。その後は下がっていき、できてから約10億年以上たつと1万度以下になります。
Q. 白色矮星の密度はどれくらい高いのですか?
A. 白色矮星の物質は、ティースプーン1杯分でもピックアップトラック(荷台のある小型トラック)より重くなります。
Q. 白色矮星になる前の赤色巨星は、どんな星ですか?
A. 赤色巨星は、名前とちがって実際には赤というよりオレンジ色に見えます。やがて不安定になって周期的にふくらみ、大気の一部を放り出すようになります。
Q. 白色矮星は、その後どうなるのですか?
A. 白色矮星は自分では新しい熱を生み出さないため、数十億年かけてゆっくり冷えていきます。一方、重さが上限を超え、中心付近に炭素が含まれていると、「炭素フラッシュ」という現象が起こり、Ⅰa型超新星と呼ばれる爆発になります。
Q. 太陽はいつごろ赤色巨星や白色矮星になるのですか?
A. 太陽にはこのあとおよそ50億年の寿命があり、その後にまず赤色巨星になります。
「水金地火木土天海」の順に並べた、太陽系の8つの惑星
水星です。本当の色に近い色合いで表した画像です。Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Arizona State University/Carnegie Institution of Washington / Wikimedia Commons(Public domain)
金星です。NASAの探査機マリナー10号が金星から遠ざかりながら写した姿で、厚い雲が全体を包んでいます。Credit: NASA/JPL-Caltech / Wikimedia Commons(Public domain)
地球です。1972年12月7日、月へ向かうアポロ17号の乗組員が約2万9400kmの距離から撮影した、「ザ・ブルー・マーブル」と呼ばれる有名な写真です。Credit: NASA/Apollo 17 crew; taken by either Harrison Schmitt or Ron Evans / Wikimedia Commons(Public domain)
火星です。ヨーロッパ宇宙機関の探査機ロゼッタが2007年2月に火星のそばを通過したとき、搭載カメラ「OSIRIS」で写した実際の色に近い画像です。Credit: ESA & MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA, CC BY-SA 3.0 IGO / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0 igo)
木星です。ハッブル宇宙望遠鏡の外惑星の観測計画「OPAL」が2024年1月5日に写した、実際の色に近い姿です。Credit: NASA/STSCI (S.T.A.R.S) / Wikimedia Commons(Public domain)
土星です。探査機カッシーニが2008年7月に延長ミッションを始めた直後に集めた画像から作られた、自然な色の姿です。Credit: NASA / JPL / Space Science Institute / Wikimedia Commons(Public domain)
天王星です。ハッブル宇宙望遠鏡が自然な色で写した画像で、かすかな環も見えています。Credit: NASA/ESA and Erich Karkoschka, University of Arizona / Wikimedia Commons(Public domain)
海王星です。2016年5月16日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影した画像で、大気の中に暗い渦があることが確かめられました。Credit: NASA, ESA, and M.H. Wong and J. Tollefson (UC Berkeley) / Wikimedia Commons(Public domain)
写真で見る星の一生と太陽系の惑星
1回に飛び出すガスの量によって、惑星どうしが「公転周期の比が簡単な整数比になる関係」に入る確率がどう変わるかを示した図(パネルA)です。調べているのは、木星と土星の5対2の関係と、本文にも出てきた天王星と海王星の2対1の関係です。パネルBは、こうした関係に入ったかどうかで分けて、30億年後まで残った割合を比べています。Credit: Batygin et al., The Astrophysical Journal Letters (2026)(CC BY 4.0)
らせん星雲の一部を大きく写した画像です。本文に載せた写真と同じ星雲で、年老いた星が噴き出したガスが光っている「惑星状星雲」です。真ん中の星は、やがて白色矮星になります。Credit: NASA, NOAO, ESA, the Hubble Helix Nebula Team, M. Meixner (STScI), and T.A. Rector (NRAO) / Wikimedia Commons(Public domain)
ハッブル宇宙望遠鏡の可視光の観測と、地上の大双眼望遠鏡の赤外線のデータを重ねた、環状星雲(リング星雲)の画像です。星雲の本当の形を明らかにした1枚として公開されました。Credit: NASA, ESA, C.R. Robert O’Dell (Vanderbilt University), G.J. Ferland (University of Kentucky), W.J. Henney and M. Peimber / Wikimedia Commons(Public domain)
ハッブル宇宙望遠鏡が写した環状星雲(メシエ57)で、地球からは単純な楕円形に見えます。環状星雲は、年老いた星が噴き出したガスが光る惑星状星雲のひとつで、真ん中の星はやがて白色矮星になります。Credit: NASA, ESA, and C. Robert O’Dell (Vanderbilt University) / Wikimedia Commons(Public domain)
紫外線で写した星ミラで、彗星のような長さ13光年を超えるガスの尾を引いています。ミラは数十億年前には太陽に似た星でしたが、今は表面の物質を大量に放出している赤色巨星です。やがてガスを出しつくし、あとには白色矮星が残るとされています。Credit: NASA / Wikimedia Commons(Public domain)
赤色巨星のちょうこくしつ座R星のまわりにアルマ望遠鏡の観測で見つかった渦巻きの構造を、観測データから描いた画像です。この渦巻きは、予想されていなかったものでした。Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
ハッブル宇宙望遠鏡が写した赤色巨星、ちょうこくしつ座R星です。本文で赤色巨星の例として載せた星と同じ星を、別の望遠鏡で見た姿です。Credit: ESA/Hubble & NASA / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
ハッブル宇宙望遠鏡が大きく写した木星です。ローマ神話の神々の王にちなんで名づけられた巨大な惑星で、太陽系のほかの惑星を全部合わせたよりも重い惑星です。Credit: NASA Hubble / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
ヨーロッパ南天天文台の大型望遠鏡VLTと、ハッブル宇宙望遠鏡による海王星の画像です。左の画像は、VLTの観測装置「MUSE」の観測モードを試験しているときに得られました。Credit: ESO/P. Weilbacher (AIP)/NASA, ESA, and M.H. Wong and J. Tollefson (UC Berkeley) / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
NASAの太陽観測衛星SDOが、波長304オングストロームの光で写した太陽です。太陽は高温のガスでできていて、そのほとんどは水素です。Credit: NASA/SDO (AIA) / Wikimedia Commons(Public domain)
太陽系の惑星と、よく知られたいくつかの星の大きさを比べた図です。星の色は温度をもとに推定したもので、土星の環は実際の比率より少し大きく描かれています。Credit: Dave Jarvis (https://dave.autonoma.ca/) / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
ハッブル宇宙望遠鏡が毎年続けている、太陽系の巨大な惑星の観測で得られた画像です。記事で行く末が語られた外側の惑星たちの、大気の変化を追うための観測です。Credit: European Space Agency / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
太陽の写真です。表面に、黒点と呼ばれる暗い点がいくつか見えます。Credit: Photo by Jay Brand on Pexels(Pexels のライセンス)