「宇宙の花火」を限界まで拡大したら、巨大な真珠が連なっていた──1粒で海王星の軌道10個ぶん
「宇宙の花火」を限界まで拡大したら、巨大な真珠が連なっていた──1粒で海王星の軌道10個ぶん / Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA
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「宇宙の花火」を限界まで拡大したら、巨大な真珠が連なっていた──1粒で海王星の軌道10個ぶん

2026.10.10 21:30:42 Saturday

アメリカのハーバード・スミソニアン天体物理学センター(CfA)とオーストリア科学技術研究所(ISTA)が共同で率いた研究によって、1181年に日本や中国の人々が目撃した超新星の残骸「Pa 30」で、花火のように放射状に伸びる光の筋が、実は小さなガスの塊が数珠のように連なったものだったことが明らかになりました。

塊の1つ1つは、太陽系でいちばん外側を回る海王星の軌道を10個ならべられるほどの幅があり、しかも大きさが驚くほどそろっています。

研究を共同で率いたイラリア・カイアッツォ氏は「塊の大きさは驚くほど均一です。これをモデルで再現してみたいと思っています」と述べています。

四方へ吹き飛んだはずのガスは、なぜ同じ大きさの粒に切り分けられたのでしょうか。

研究内容の詳細は2026年10月6日に『The Astrophysical Journal』にて発表されました。

Like Pearls in the Sky(Institute of Science and Technology Austria) https://ista.ac.at/en/news/like-pearls-in-the-sky/
Detection of knots in the supernova type Iax remnant Pa 30 https://doi.org/10.3847/1538-4357/ae9cb2

1本の線だと思っていたものが、粒ぞろいの真珠だった

ジェミニ北望遠鏡が観測した超新星残骸「Pa 30」
ジェミニ北望遠鏡が観測した超新星残骸「Pa 30」 / Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA

夏の夜空に打ち上げ花火が開くと、光の筋が中心から四方へ伸びていきます。

スマートフォンで撮った写真には、その筋が何本もの線となって残ります。

線の正体は、燃えながら飛んでいく火薬の粒が通った跡です。

地球から約7500光年先、カシオペヤ座の方向には、この写真によく似た姿の天体があります。

超新星残骸「Pa 30」です。

超新星残骸とは、星が一生の最後に起こす大爆発(超新星爆発)で吹き飛ばされた物質が、宇宙空間に広がってつくる天体です。高温になったガスが光を放つため、爆発から長い時間がたっても姿が見えます。

Pa 30の中心からも、花火によく似た筋が放射状に広がっています。

これまでの画像では、その筋は滑らかな1本の線に見えていました。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのティモシー・カニンガム氏(現・英ウォーリック大学)らの研究チームは、この筋をハワイのマウナケア山頂にあるジェミニ北望遠鏡で撮り直しました。

使ったのは、同望遠鏡のジェミニ多天体分光器(GMOS)に取り付けた、硫黄(S II)と酸素(O III)が放つ光だけを通すフィルターです。

すると、筋は1本の線ではありませんでした。

小さなガスの塊が、糸に通した真珠のように連なっていたのです。

硫黄の光でとらえた画像には、これまでの画像で見えていた約10倍にあたる筋の構造が現れました。

しかも粒は巨大です。

1つの直径はおよそ1000億kmで、太陽系でいちばん外側を回る海王星の軌道を10個ならべられるほどの幅があります。

これほど細かい構造まで見えたのは、Pa 30が地球に近いからだとカイアッツォ氏は説明しています。

なぜ粒に分かれたのかは、まだ候補が挙がった段階です。

研究チームは、爆発した星の周りにあった物質の温度や密度にむらがあり、そのむらが広がる物質の形を決めた可能性を挙げています。

それでも、粒の大きさがこれほどそろっているという事実は、爆発の直前にその星の周りに何があったのかを絞り込む手がかりになります。

185日間消えなかった星を、中国も日本も中東も見ていた

この花火が開く瞬間を、実際に見た人たちがいます。

1181年8月の初め、夜空に見慣れない星が現れました。

中国と日本の人々がその出現を書き残し、記録は8つの文献に残っています。

さらに遠く離れた中東では、エジプトとシリアを治めたサラディンをたたえる詩に、空に現れた新しい星が詠み込まれていました。

その星は185日ものあいだ見え続けました。

この1000年のあいだに、望遠鏡なしで人の目に記録された天の川銀河の超新星は、5例しかありません。

「SN 1181」と呼ばれるこの爆発は、そのうちの1つです。

ただし、その残骸がどこにあるのかは長いあいだ分かっていませんでした。

見つかったのは2013年です。

赤外線で空を撮影したデータの中から、アマチュア天文家のダナ・パチック氏が見覚えのないガスの広がりを見つけたのです。

「Pa 30」という名前は、発見者の名前と、彼が見つけた30番目の天体であることに由来しています。

のちの研究で、この天体のある方向が1181年の記録の指す場所とほぼ重なることがわかりました。

さらに、ガスが広がる速さから逆算した爆発の年代も、当時の明るさの見積もりも、記録とよく合いました。

こうしてPa 30は、SN 1181が残した残骸の最有力候補になったのです。

そして、この花火の中心には、1つの青白い星が写っています。

爆発を生き延びた星が、845年たってもど真ん中から動かない

中央で青白く光っている星は、Pa 30を生み出した爆発のあとに残された中心星「IRAS 00500+6713」です。

表面の温度は約20万℃という高温で、そこから秒速約1万6000kmの風が吹き出しています。

不思議なのは、この星が残っていることです。

「Ia型超新星」と呼ばれる爆発を起こすのは、白色矮星という天体です。

白色矮星は、太陽のような星が燃料を使い切ったあとに残る芯で、大きさは地球ほどまで縮んでいるのに重さは太陽と同じくらいという、きわめて密度の高い天体です。

2つの星が互いの周りを回り合う連星の中でこの白色矮星が爆発すると、エネルギーがあまりに大きいため、白色矮星そのものが丸ごと吹き飛び、あとには何も残らないと考えられています。

ところがPa 30の中心には、星が残りました。

そのためこの爆発は、エネルギーが低く芯が吹き飛びきらない「Iax型超新星」だったと考えられてきました。

NOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)によれば、Pa 30は今のところ天の川銀河で知られている唯一のIax型の残骸です。

生き残った星には、もう1つ予想されることがあります。

爆発の勢いで、どこか一方へ弾き飛ばされるはずだということです。

ボートから岸へ飛び降りると、ボートは反対側へ押し出されます。

爆発が少しでも片側に偏れば、残された星も同じように反対側へ押し出されます。

そして一度押し出されれば、宇宙空間には星を止めるものがありません。

Iax型の爆発を計算したモデルの中には、生き残った星が秒速数百kmという猛烈な速さで飛び去ると予想するものもあります。

845年あれば、残骸の中心から目に見えてずれた場所まで動いてしまう計算です。

ところがPa 30の中心星は、残骸のほぼ真ん中にありました。

研究チームは、放射状に伸びる筋の向きをすべてたどり、残骸の幾何学的な中心を割り出しました。

その点は、中心星の位置とほぼぴたりと重なっていました。

横向きのずれから見積もると、星が真横に動いた速さは、速くても秒速14kmです。

カイアッツォ氏は「星が遠ざかっていく動きは、ほとんど見られません」と述べています。

845年かけても中心からほとんどずれていない。

それは、この爆発がほとんど偏りのない、かなり対称的なものだったことを示しています。

Iax型だという見方は、これで一段と確かになりました。

そしてこの配置は、爆発がどんな形で起きたのかを絞り込む、新しい手がかりになります。

Iax型の超新星が、どんな星からどのように起きるのかは、これから解き明かす課題です。

Pa 30については、2つの白色矮星が衝突して起きた爆発ではないかという説も提案されています。

生き残った星が中央に見えていて、吹き飛んだ物質が粒となって並んでいるPa 30は、その答えを探せる唯一の現場です。

カニンガム氏は、新しい望遠鏡が夜空の奥を調べ続ければ、似た天体がさらに見つかるだろうと述べています。

そして1181年に空を見上げた人々について、「彼らの記述が物語を始め、私たちの観測がその物語を900年近くにわたって続けさせてくれています」と語っています。

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