「星の原の黄金の木」が教えてくれたこと
では、このちょっと変わった学名には、どんな意味があるのでしょうか。
属名のラウリンクウェは、トールキンの『指輪物語』のエルフの言葉(クウェンヤ)で「黄金の木」を意味します。
鮮やかな黄色の、木のような群体にちなんだ名前です。
種名のエレニャは、同じ言葉で「星の」「星座」といった意味を持ちます。
これは、クモヒトデがすき間なく並ぶ「星の原」で見つかったことにちなんでいます。
研究チームは、クモヒトデの原に広がる黄金の林が、エルフの神秘的な世界を思わせると書いています。

一方で、この研究には、サンゴの研究全体に関わる大事な教訓も含まれていました。
もしmtMutSの遺伝子だけに頼っていたら、形のほとんど似ていない科に誤って入れていた、と研究チームは指摘します。
この遺伝子は、属のレベルの関係を見分けるのには、ふだんよく役立つとされています。
しかし今回の結果は、もっと大きなまとまり(科のレベル)を決める時には注意が必要だと示しました。
なぜミトコンドリアの遺伝子は、ときに違う答えを出すのでしょうか。
過去の研究では、八放サンゴのミトコンドリアの遺伝子でつくる系統樹は、核の遺伝子でつくる系統樹としばしば食い違うと指摘されています。
種そのものではなく、ミトコンドリア自身がたどってきた歴史を映しているのかもしれない、という見方です。
また、ミトコンドリアの遺伝子には自然選択(環境に合った性質が子孫に残っていく仕組み)が強く働くとみられています。
さらに、その遺伝子が変化する速さは、八放サンゴのグループごとに大きく違うことも分かっています。
研究チームは、遠く離れたグループどうしの関係を知るには、数百の遺伝子にもとづく解析が必要だと強調しています。
生きている間は黄金色に輝き、引き上げて保存すると茶色に変わってしまう深海のサンゴ。

その本当の居場所は、家族写真を1枚だけ見るのではなく、アルバムを丸ごとめくって初めて分かったのです。
ここからは、八放サンゴ亜綱をもっと知りたい人へ
八放サンゴとは、触手が8本あるサンゴのグループです

ウミエラやアオサンゴも、この八放サンゴの仲間に入ります。
体はふつう柔らかいものの、多くの種では、石灰質などの硬い材料で補強されています。
仲間の分け方も見直されていて、かつての「ウミトサカ目」というまとめ方は、遺伝子を比べる研究をきっかけに使われなくなりました。




