風車の羽根にペンキを塗ると、鳥の衝突が大きく減ると判明
風車の羽根にペンキを塗ると、鳥の衝突が大きく減ると判明 / 風車のそばで狩りをする鳥です(ビカ・ダ・カナ付近)。 Credit: VillageHero from Ulm, Germany / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)
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風車の羽根にペンキを塗ると、鳥の衝突が大きく減ると判明

2026.10.18 07:30:00 Sunday

扇風機のスイッチを入れると、さっきまで見えていた羽根が、向こうが透けて見える薄い円盤のようになっていきます。

風力発電は、気候変動に立ち向かうための大切な手段です。

ところが鳥にとっては、回る巨大な羽根が命取りになることがあります。

米国だけでも、風車にぶつかって死ぬ鳥は年に最大100万羽にのぼるとされます。

この問題に対して、スペイン南部の風力発電所で、安くて単純な工夫が試されました。

使ったのは、高価な装置ではなく、ペンキです。

3枚ある羽根のうち1枚だけを黒く塗ると、鳥の死はどこまで変わるのでしょうか?

研究の詳細は、ノルウェー自然研究所らにより、2026年9月1日付で学術誌『Ecology and Evolution』に掲載されました。

Painted wind turbines can dramatically reduce bird deaths, study finds (Mongabay) https://news.mongabay.com/short-article/2026/10/painted-wind-turbines-can-dramatically-reduce-bird-deaths-study-finds/ 風力発電施設に係るバードストライク防止策(環境省) https://www.env.go.jp/nature/yasei/sg_windplant/birdstrike.html Estimates of bird collision mortality at wind facilities in the contiguous United States(Tethys) https://tethys.pnnl.gov/publications/estimates-bird-collision-mortality-wind-facilities-contiguous-united-states-america A Canadian estimate of bird mortality due to collisions and direct habitat loss associated with wind turbine developments(Tethys) https://tethys.pnnl.gov/publications/canadian-estimate-bird-mortality-due-collisions-direct-habitat-loss-associated-wind
Efficacy of Painting Wind Turbine Blades as a Mitigation Measure to Reduce Bird Collisions in a Mediterranean Wind Farm https://doi.org/10.1002/ece3.74017
この研究の概要
発表
2026年9月に、科学誌『Ecology and Evolution』に論文が掲載されました。
研究チーム
ノルウェー自然研究所のロエル・メイ氏が筆頭著者を務める研究チームです。
調べた対象
スペイン南部のタリファにあるエル・ルエド風力発電所の20基の風車と、その下で見つかった鳥の死骸です。
調べ方
4基の風車で3枚ある羽根の1枚を黒く塗り、残る16基の白い風車と比べました。2012年から2024年まで毎日死骸を探し、塗る前の約9年半と塗った後の約3年半を比べました。
分かったこと
羽根を塗った風車では、塗らない風車と比べて鳥の衝突死が約74%減りました。効果は小鳥と大型の水鳥で大きく、猛禽類では小さめでした。
まだ分かっていないこと
その土地の鳥の数や飛び方、鳥の視野が効果をどこまで左右するのかは、まだ分かっていません。

回る白い羽根は、鳥にはぼやけて見える

そもそも鳥は、なぜあれほど大きな羽根にぶつかってしまうのでしょうか。

風車の白い羽根は、速く回ると透けたようにぼやけて見えます。

この現象は「動きのぼやけ(モーションスミア)」と呼ばれます。

このぼやけのせいで、鳥は羽根を見分けにくくなると考えられています。

そこで、羽根の1枚だけ色を変えてぼやけを崩せば、鳥が羽根に気づきやすくなるかもしれません。

実際に、小型のハヤブサの仲間であるアメリカチョウゲンボウを使った実験室の実験がありました。

その実験では、1枚を黒く塗ると羽根を見つけやすくなる可能性が示されていました。

ノルウェーの風力発電所では、この方法で鳥の死亡率が最大70%減ったと報告されています。

南アフリカでは、黒ではなく赤で1枚を塗り、83%の減少が報告されました。

一方、オランダでの追試では、はっきりした減少は見られませんでした。

効果が場所や鳥の顔ぶれで変わるのかは、まだ確かめる必要があったのです。

そこで研究チームが選んだ舞台が、ジブラルタル海峡に近いタリファの「エル・ルエド風力発電所」です。

この一帯はヨーロッパとアフリカを結ぶ渡り鳥の大通りで、春と秋には数百万羽が通過します。

チームは、発電所にある20基の風車のうち4基で、羽根1枚を黒く塗りました。

羽根の1枚を鳥への目印として黒く塗った、エル・ルエド風力発電所の風車です(スペイン)。
羽根の1枚を鳥への目印として黒く塗った、エル・ルエド風力発電所の風車です(スペイン)。Credit: May et al., Ecology and Evolution (2026)(CC BY 4.0)

残る16基は白いままにして、比べるための「対照」としました。

エル・ルエド風力発電所での実験の配置を示した図です(スペイン)。番号の付いた丸が1基ずつの風車で、羽根を塗った4基は赤で示されています。
エル・ルエド風力発電所での実験の配置を示した図です(スペイン)。番号の付いた丸が1基ずつの風車で、羽根を塗った4基は赤で示されています。Credit: May et al., Ecology and Evolution (2026)(CC BY 4.0)

調査員は2012年から2024年まで、毎日すべての風車の下を見回りました。

風車の周り、テニスコート約13面分の範囲を歩いて死骸を探し、牛のいる区域では高い所から双眼鏡で探しました。

塗る前の約9年半と、塗った後の約3年半を比べられる設計です。

この長い見回りで見つかった鳥の死骸は、44種297羽にのぼりました。

次ページ黒い羽根1枚で、鳥の死はどこまで減ったのか?

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