回る白い羽根は、鳥にはぼやけて見える
そもそも鳥は、なぜあれほど大きな羽根にぶつかってしまうのでしょうか。
風車の白い羽根は、速く回ると透けたようにぼやけて見えます。
この現象は「動きのぼやけ(モーションスミア)」と呼ばれます。
このぼやけのせいで、鳥は羽根を見分けにくくなると考えられています。
そこで、羽根の1枚だけ色を変えてぼやけを崩せば、鳥が羽根に気づきやすくなるかもしれません。
実際に、小型のハヤブサの仲間であるアメリカチョウゲンボウを使った実験室の実験がありました。
その実験では、1枚を黒く塗ると羽根を見つけやすくなる可能性が示されていました。
ノルウェーの風力発電所では、この方法で鳥の死亡率が最大70%減ったと報告されています。
南アフリカでは、黒ではなく赤で1枚を塗り、83%の減少が報告されました。
一方、オランダでの追試では、はっきりした減少は見られませんでした。
効果が場所や鳥の顔ぶれで変わるのかは、まだ確かめる必要があったのです。
そこで研究チームが選んだ舞台が、ジブラルタル海峡に近いタリファの「エル・ルエド風力発電所」です。
この一帯はヨーロッパとアフリカを結ぶ渡り鳥の大通りで、春と秋には数百万羽が通過します。
チームは、発電所にある20基の風車のうち4基で、羽根1枚を黒く塗りました。

残る16基は白いままにして、比べるための「対照」としました。

調査員は2012年から2024年まで、毎日すべての風車の下を見回りました。
風車の周り、テニスコート約13面分の範囲を歩いて死骸を探し、牛のいる区域では高い所から双眼鏡で探しました。
塗る前の約9年半と、塗った後の約3年半を比べられる設計です。
この長い見回りで見つかった鳥の死骸は、44種297羽にのぼりました。




