効きにくかった鳥と、広めるための壁
ただし、すべての鳥に同じように効いたわけではありません。
タカやハゲワシなどの猛禽類では、減り方は16%にとどまり、はっきりした差とは言えませんでした。
猛禽類はこの発電所でデータの多いグループの一つで、シロエリハゲワシは18羽、チョウゲンボウは17羽見つかっています。

ノルウェーや南アフリカの研究では猛禽類にも効果が見られており、今回とは違う結果です。
研究チームは、渡りの途中の鳥に加えて、地元で繁殖する猛禽類もぶつかっていた可能性を挙げています。
地元の鳥は数は少なくても、餌探しなどでこの一帯をよく使っている可能性があります。
そのため、たまに通る渡り鳥より、ぶつかる危険が大きいのかもしれません。
なお、ハゲワシやトビのように死肉を探す鳥は、もともと風車にぶつかりやすい鳥です。
飛びながら地面を見渡しているうえ、真正面が見えにくいため、前方に死角ができて障害物に気づくのが遅れるとされます。
空中で虫を捕るアマツバメやツバメの仲間でも、はっきりした減少は見られませんでした。
調べ方にも注意点があります。
死骸の見落としや、動物による持ち去りの割合を確かめる試験は行われていません。
ただ、同じ発電所で同じやり方で比べているため、塗った効果を比べる目的には使えると研究チームは述べています。
また、地域の鳥の数や飛び方、鳥の視野が効果にどう影響するかは、まだ分かっていません。
実際に広めるうえでも、壁が残っています。
今のところ風車メーカーは黒い羽根を供給しておらず、設置後に塗ると風車の保証が切れてしまいます。
論文の筆頭著者であるノルウェー自然研究所のロエル・メイ氏は、稼働中の風車に塗るのは手間も費用もかかると話します。
製造の段階で塗るほうが簡単で安いものの、メーカーは羽根が熱を持ちやすくなることや重さが変わることを心配しています。
論文では、黒い羽根に雷が落ちやすくなるのではという懸念も挙げられています。
そのため、赤など別の色の塗り方を調べることも大切だとされています。
それでも今回の結果は、この方法が緯度の大きく違う場所でも効くことを裏付けました。
メイ氏は、業界が規模を広げて実際に使い、結果を見ながら学んでいくことを望んでいます。
白く並ぶ風車からサギやコウノトリを守る鍵は、最新の装置ではなく、羽根1本分の黒いペンキだったのかもしれません。
風車の世界にも、「1本だけ色違い」というおしゃれの時代がやって来るのかもしれません。
ここからは、バードストライクをもっと知りたい人へ
バードストライクとは、鳥が人の作ったものにぶつかってしまう事故のことです

鳥がぶつかる相手は風車だけではありません。車や鉄塔、建物の窓など、人が作ったさまざまなものにぶつかります。
その中で、風車にぶつかって死ぬ鳥の数は、窓や車、鉄塔にぶつかって死ぬ数よりずっと少ない可能性が高いと、カナダの研究は見ています。
ただし風車では、鳥だけでなくコウモリも、回る羽根にぶつかって命を落としています。
被害の大きさは土地によっても違います。アメリカの研究では、風車1基あたりで死ぬ鳥の数は、グレートプレーンズという地域でいちばん少なかったと報告されています。
また、鳥の種類によっては影響が大きくなります。日本で絶滅のおそれがあるとされるオジロワシでは、死因が分かっているものの中で、風車への衝突がいちばん多くなっています。
風車を建てる場所の選び方も大切です。カナダの研究は、影響を受けやすい生息地や、絶滅のおそれのある種が集まる場所を避ければ、その種の数が全体として減るほどの影響は考えにくいとしています。




