この研究の概要
発表
考古学の専門誌『Journal of Archaeological Method and Theory』に、2026年9月に発表されました。
研究チーム
国際研究プロジェクト「BODY-POLITICS」の研究チームで、論文の筆頭はマリアンネ・ヘム・エリクセンさんです。
調べた対象
スカンジナビア南部と中部の集落で、家や穴、井戸、炉などに置かれていた人の骨のうち、焼かれていないもので、およそ192人分です。
調べ方
骨が置かれていた197か所のうち123か所の骨は研究者が直接調べ、収蔵先が閉じていて調べられなかった残り74か所は、発掘の報告書や記録から情報を集めました。
分かったこと
192人のうち12人(約6%)の骨に合わせて19か所のけがの跡があり、少なくとも8人には意図して加えられた暴力の跡がありました。骨の一部しか残っていない人が多いにもかかわらず、この割合は、これまでに報告されたバイキング時代の墓地の多くと同じくらいでした。
まだ分かっていないこと
多くの人は骨の一部しか見つかっていないため、体のほかの部分にけががあったかどうかは分かっていません。そのため研究チームは、実際のけがの割合はもっと高かったとみています。
墓地に葬られなかった人々の骨を調べるこれまで、過去の暴力を知るおもな手がかりは、墓地から出てくる骨でした。
バイキングの時代の暴力は、英雄の物語 (サガ)などの書き物からもうかがえます。
また、土を盛った墓や、多くの人をまとめて埋めた墓からは、ひどいけがを負った骨が見つかってきました。
しかし研究チームは、暴力の犠牲者のかなりの部分が墓地に葬られていないことに目を向けました。
当時は、誰もが墓地できちんと弔われたわけではなかったからです。
人々は、遺体やその一部を、家や井戸、宴を開く広間に置くこともありました。
そこでチームが注目したのが、暮らしの場で見つかった、ばらばらの骨や、ある程度そろった骨です。
見つかった場所は、細長い家(ロングハウス)の中や、穴、井戸、柱を立てた穴、そして炉などさまざまです。
バイキングのロングハウスです(アンスト)。 Credit: Gerald England / Wikimedia Commons (CC BY-SA 2.0 )
こうした骨は、これまで研究の中であまり目を向けられてこなかった資料でした。
チームは、博物館に収められた骨と、以前の発掘の報告書をあらためて見直しました。
探したのは、骨に残るけがの跡と、そのけがが治った跡です。
骨の形を詳しく見る方法に、遺伝子 などの分子を調べる方法や、デジタル画像を使う方法も組み合わせました。
対象となったのは、およそ1500年にわたる時代に、暮らしの場へ置かれた200人近くの骨です。