ママの正体はパパのクローン、オス1匹から子孫を作ることにマウスで成功
ママの正体はパパのクローン、オス1匹から子孫を作ることにマウスで成功 / ハツカネズミです。 Credit: kcthetc1 / Wikimedia Commons(CC0)
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ママの正体はパパのクローン、オス1匹から子孫を作ることにマウスで成功

2026.10.16 18:00:00 Friday

動物園のニュースで、残りわずかな個体しかいない動物の話を聞くと、繁殖できないのかな?と考えてしまいます。

哺乳類の性別は、受精のときに決まる染色体の組み合わせによって一方向に定まり、途中で入れ替わることはないとされてきました。

ところが魚などの中には、まわりの状況に応じて性を切り替える種がいて、その柔軟さは繁殖のうえで有利に働くと考えられています。

もし哺乳類でもこの一方通行を迂回できたなら、生き残りがごくわずかになった動物を増やす道が開けるかもしれません。

オスのマウス1匹の体細胞のゲノムだけを元に、繁殖をもう一度始められるのか、研究チームはその問いに挑みました。

研究の詳細は、2026年8月4日付で『bioRxiv』に公開されました。

Sex-changing mouse clones may help fight to save endangered species (Scientific American) https://www.scientificamerican.com/article/sex-changing-mouse-clones-may-help-fight-to-save-endangered-species/ 理化学研究所 プレスリリース(2018年7月20日) https://www.riken.jp/press/2018/20180720_1/index.html 科学技術振興機構 サイエンスポータル(2013年6月28日) https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20130628_01/index.html
Initiating mammalian reproduction from a single male genome https://doi.org/10.64898/2026.08.03.742506
この研究の概要
発表
2026年8月4日に、bioRxiv で公開された論文です。専門家による査読は、まだ受けていません。
調べた対象
対象は、マウスの胚と、オスのマウスの体細胞です。体細胞は、生まれたばかりのオスの精巣の細胞、大人のオスのしっぽから採った血液の細胞、凍らせておいた血液の細胞を使いました。
調べ方
研究チームは、Y染色体のセントロメア(細胞分裂で染色体を振り分けるのに欠かせない部分)をゲノム編集で切り、Y染色体を取り除く方法「Y-CUT」を作りました。この方法を、オスの体細胞の核を卵子に移して作ったクローン胚に使いました。
分かったこと
胚が育つうちにY染色体は核の外へ追い出され、オスの胚がメスとして生まれました。その結果、オス1匹のゲノムからオスとメスのクローンが生まれ、このオスとメスのクローンどうしの交配で、次の世代も生まれました。
まだ分かっていないこと
X染色体が1本のメスは、ヒトやウマなど多くの哺乳類では子を産めません。そのため、ほかの動物に広げるには新しい技術が必要です。また、核を移す先に卵子が要るため、オスの材料だけで繁殖を始めることはまだできません。

染色体の「取っ手」を壊すという発想

研究チームが着想を得たのは、性を切り替えられる日本の魚でした。

狙いは、オスの胚からY染色体そのものを取り除き、メスとして発生させることです。

そこで標的にしたのが、細胞分裂のときに染色体を引っぱるための取っ手にあたる部分(セントロメア)でした。

ゲノム編集の道具CRISPR-Cas9でこの取っ手に切れ目を入れれば、Y染色体は分裂の際に正しく振り分けられないことが起こり、やがて取り残されていくはずだ、という読みです。

取っ手が働かなくなっても、染色体の受け渡しを見張る細胞の仕組みは警報を鳴らさないため、胚の発生そのものは止まらないと期待されました。

培養したオスのマウスの細胞で3通りの切り方を試したところ、最もよく効いたのは1通りだけでした。

その切り方を使った細胞では、染色体全体を染め分ける検査でY染色体の信号が見えなくなり、Y染色体がまるごと失われたと考えられました。

この手法は、Y-CUTと名付けられました。

次ページY染色体は、桑実胚までに核の外へ追い出された

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