Y染色体は、桑実胚までに核の外へ追い出された
では、生きた胚の中で、Y染色体は実際にどう消えていくのでしょうか。
研究チームは、受精卵・2細胞期・4細胞期・桑実胚(そうじつはい、細胞が桑の実のように寄り集まった段階)という4つの時点で、Y染色体を染めて観察しました。
受精卵の段階では、Y染色体の信号は、比べるためにCas9だけを入れた胚と同程度でした。
2細胞期になると、Y染色体は片方の細胞の核に偏って残るか、核の外の小さな袋に切り離されるかのどちらかになりました。
この2つの現れ方は、ほぼ同じくらいの頻度で見られました。
4細胞期では、多くの胚でこの小さな袋(微小核)が見つかり、一部の細胞にはまだ核の中にY染色体が残っていました。
そして桑実胚の頃には、核の中からY染色体の信号は消え、ほぼ微小核としてだけ見つかるようになりました。
調べたどの時期でも、Y染色体を含む微小核は胚1個あたりたいてい1個か2個でした。このことから、Y染色体は細かい破片に散らばることなく、核の外へ追い出されていたと考えられます。
比べるためにCas9だけを入れた胚では、こうした微小核は見られませんでした。
ただし、この切り方がどのマウスにも同じように効くわけではありませんでした。
実験用マウスのY染色体には2つの型があり、C57BL/6など多くの系統は、東アジアの愛玩用マウスから持ち込まれた型を受け継いでいます。

一方、ICRなどの系統は、もう一方の型のY染色体を持っています。
体外受精で作った受精卵で比べると、ICR由来のY染色体を持つ胚で、Y-CUTの効きが際立って良いという結果になりました。
この効きの違いは、セントロメアの繰り返し配列の作りの違いを反映しているとみられます。ICR側の型には、切る目印が400か所以上あると見積もられました。
効きの悪い組み合わせでは、Y染色体が一部残ったままのメスも現れており、どちらの型を使うかでY染色体の除去効率に大きな差が出ていました。




