・1日に4時間もの時間を空想の中で過ごす「過剰空想」な人々がいる
・空想自体に問題があるわけではないが、あまりに長時間の空想は現実世界にも影響をきたしてしまう
・この症状に関する研究は少ないが、治療には認知行動療法が有効とされる
あなたは1日にどのくらい「空想」しますか?
中には空想・妄想が好きすぎて、ふとした瞬間に気がついたら現実世界から目を背けてしまっている人もいるのではないでしょうか。しかし、それが「1日4時間」にも及んでしまえば、それは「過剰空想」と呼ばれてしまうかもしれません。
Trapped in a Daydream: Daily Elevations in Maladaptive Daydreaming Are Associated With Daily Psychopathological Symptoms
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5962718/
頭の中で起こる出来事に「不可能」などはなく、世界はあなたのものです。実際に空想が私たちにいい影響をもたらすことが示された研究もあります。そこでは空想によって集中力が向上し、空想行為が私たちを「成功」に近づけている可能性があるとされているのです。
しかし、最新の研究が、あまりにも長い白昼夢は「過剰空想(maladaptive daydreaming)」と呼ばれ、私たちにとってあまりいいものではないことを教えてくれています。今回の研究では、過剰空想の名付け親でもある臨床心理学者のイーライ・ソマー氏が、77人の「過剰空想」と自己診断した人々について調査しています。
ある女性は、空想によって本当に感情が大きく揺さぶられ、「幸せ」や「悲しみ」を感じて泣き笑いすることがあると主張しています。彼女は空想を「人生の一部」ととらえ、1日のうちの数時間を「空想の中」で過ごすことがあるとのこと。
もちろん空想自体に問題があるわけではありません。問題なのは、そうして長い時間を空想の世界で過ごすことによって、彼女は現実世界における「家族」や「友人」とのリアルな人間関係の多くを犠牲にしてしまっていることです。
実験に参加したのは26カ国、18-60歳の人々ですが、そのうち80%が「女性」でした。ソマー氏ら研究者は、女性の方が「過剰空想」の状態に陥る可能性が高いことを明かしています。
また、参加した77人のうち21人に「うつ」の症状があり、14人が「不安障害」、5人が「強迫性障害」を患っていることが分かりました。これらの症状が過剰空想のメカニズムとリンクしていることは明らかですが、その詳細については明らかにされていません。
また、空想により現実世界に問題が生じている人々には認知行動療法が効果的とされています。これにより、衝動的に「空想の世界」に入り込むのを防ぐことができるのです。
この研究の結果は、すべて参加者の自己申告に基づいて導き出されたものであり、その信憑性は高くはありません。しかし、過剰空想といった症状は、標準的な精神疾患の診断マニュアルには記載されておらず、この研究が新たな分野に対応していくことが期待されています。