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自殺原因の4分の1は「知覚異常」と関係していることが明らかに

2018.12.02 Sunday

Point
・自殺者や自殺未遂者の4分の1が、幻聴や幻視といった基本的な知覚情報に対する脳の解釈機能に問題を抱えていることが判明
・知覚異常は、精神疾患やうつ病などを患っていない人にも生じる可能性があり、全体の人口の5〜7パーセントが経験
・知覚異常に関連する因子に対応する方法が分かれば、自殺行動の予測やその防止に役立つ

日本でも大きな社会問題となっている「自殺」。自殺を試みる原因・動機は、健康問題、経済・生活問題、人間関係などなどさまざまですが、いずれも最終的には精神状態が不安定になり自殺を試みるイメージがあるのではないでしょうか。

しかし実は、自殺者や自殺未遂者の4分の1が、精神疾患やうつ病と関係なくとも幻聴や幻視といった基本的な知覚情報に対する脳の解釈機能に問題を抱えていることが、アイルランド王立外科医学院の研究チームによって発表されました。知覚情報とは、視覚や聴覚を通して脳が受け取る情報のことです。論文は、雑誌”JAMA Psychiatry”に掲載されました。

Association of Psychotic Experiences With Subsequent Risk of Suicidal Ideation, Suicide Attempts, and Suicide Deaths: A Systematic Review and Meta-analysis of Longitudinal Population Studies
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2715166

気分の落ち込みや、無気力、絶望感などは、よく自殺行動とともに報告されますが、「知覚異常」を結びつける研究は今回が初めてとなります。

今回研究チームが8万人以上を対象に分析を行った結果、自殺を試みたり、その結果死に至った人々の4分の1が、幻聴や幻視といった知覚異常を経験していたことが明らかになりました。こうした現象は必ずしも、精神疾患やうつ病と関係しているとは限らず、心の病を抱えていない人にも生じる可能性があります。

過去15年以上にわたる調査では、幻聴などの知覚異常をときおり経験する人は全体の人口の5〜7パーセントだということが分かっています。こうした中には、脳がストレスを感じたり、対処できる限界を超えたりする場合に、知覚異常を経験をする人もいます。

「私たちの調査は、知覚異常に関連する因子を理解し、それらに対処することができることが分かれば、未遂を含めた自殺の少なくとも4分の1は防ぐことができることを示唆しています。年間100万人の人々が自殺で亡くなることを想像すれば、この発見は自殺防止の取り組みにとってかなり心強い側面です」と、チームを率いたイアン・ケレハー氏は語っています。医師たちは、より細心の注意をもって幻聴や幻覚などの症状を訴える患者の声に耳を傾けるべきでしょう。同時に、自殺の要因となる知覚障害を理解するための研究にさらなる投資が注がれることが期待されます。

研究チームに加わったキャスリン・イェーツ氏は、「自殺を理解しようとするならば、知覚異常についての理解をもっと深めるべきです。一体何が人々に幻聴を聴かせるのでしょか?これらの経験は自殺リスクを引き起こす生物学的・社会的因子とどう関係しているのでしょうか?解明されていない謎がまだまだたくさんありますが、今回の調査が自殺行動の予測の改善への新しい道筋を示しています」と語っています。

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via: eurekalert / translated & text by まりえってぃ

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