■人の脳における電気信号をニューラル・ネットワークが再構築することで、その信号を直接「言葉」としてアウトプットできる可能性が示された
■これにより、話すことができなくなった人がよりスムーズに会話ができるようなインターフェイスが開発されるかもしれない
■ 収集されたデータは会話ができる人のものであり、話すことができなくなった人の「想像の言葉」を形にするにはまだ越えるべきハードルが多い
脳性麻痺を患った人や、話すことができない人の「言葉」は、脳のどこかに隠れています。当然ながらそのシグナルは、直接解読できるようなものではありません。
しかし、AIの力によってその解読が可能になるかもしれません。新たな研究により、脳に埋め込んだ電極から得られたデータをニューラル・ネットワークを介することで再構築し、人が分かる言葉へと変換できる可能性が示されました。
Towards reconstructing intelligible speech from the human auditory cortex
■データ収集は困難を極める
人は脳卒中などの病気で声を失った後でも、目線でスクリーン上の文字を指定するなど、様々な方法で他者とのコミュニケーションをはかることが可能です。
しかし、もし今回のインターフェイスが脳の信号を直接言葉へと変換できるとなれば、言葉に抑揚をつけたり、速い会話の中で口を挟むことだって可能になるかもしれません。
とはいえ、研究は一筋縄ではいきません。正確なデータをとるためには、頭蓋骨を開いて直接脳に電極を埋め込むことが必要になります。
しかし、実験目的のみで人に電極を挿すことは、倫理的に許されていません。データ取得のチャンスは、脳腫瘍の切除手術の際や、てんかん患者が手術前に問題の場所を特定するために電極を埋め込んでいるわずかな時間しかないのです。