上の画像にある中心の黒点を見つめたまま、顔を前に近づけてみてください。サークルが時計回りに動き出しましたか?
今度は、黒点を見つめたまま、頭を後ろに引いてみてください。すると不思議なことに、サークルの動きが、反時計回りに変わると思います。こうした不思議な錯覚はなぜ起こるのでしょうか?
「全体」と「個別」の知覚にギャップがある
これは「ピンナ錯視(Pinna-Brelstaff illusion)」と呼ばれ、「視覚情報を処理する脳領域」の間に、伝達の遅れが生じることで起こる現象です。
中国科学アカデミーのイアン・アンドリーナ氏によると、この錯覚は「騒がしいパーティー会場の中で、話し相手の声だけをピックアップする感覚に似ている」とのこと。つまり、顔を近づけたり遠ざけたりする「頭の前後運動」が背景となる「騒音」で、実際に起こる「錯覚」がピックアップした「声」に相当します。
この錯覚は、人間の脳と近い構造を持つ「マカク」という猿においても生じました。そこで、イアン氏と研究チームは、マカクの脳に電極を差し込んで、錯覚がどのようにして起こるのかを詳しく観察しました。
すると、「サークル全体が動いていると錯覚するときの神経活動」では、「サークルを構成するダイヤの一個一個を知覚するときの神経活動(錯覚を感じていない場合)」よりも、15ミリ秒の遅れが生じていることが判明したのです。