■恐れ・怒り・喜びといった表情への感受性は年代で異なり、その発達は年齢とともに特定の変化をたどる
■いじめなどの社会的制裁に順応する思春期初期〜中期にかけて、怒りへの感受性は劇的に高まる
■高齢になるにつれて、恐れや怒りへの感受性は下降するが、喜びへの感受性はほとんど下降しない
他者にどう見られているが気になって仕方なく、周りの言動に傷つきやすい思春期。そんな多感な時代は、経験という荒波の中で揉みに揉まれているうちにやがて通り過ぎ、人は歳を重ねるほどに、楽に生きられるようになるものです。
思春期は周りの言動に対する感受性が強く、歳を重ねるにつれてポジティブになれるのはなぜでしょうか?恐れ・怒り・喜びといった社会的手がかりの察知の仕方が、年代によってどう異なるかを探る調査が行われました。
「Journal of Experimental Psychology: General」に掲載された論文によると、思春期・中年期・高齢期では社会的手がかりへの繊細さが異なり、その発達は年齢とともに特定の変化をたどるそうです。
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fxge0000559
人の表情に対する感受性を調査
研究チームは、年齢10〜85歳の男女1万人近くを対象に、他者の感情への感受性を測るデジタルテストを実施。各被験者が、恐れ・怒り・喜びといった表情のわずかな違いを、どの程度見分けることができるかを調べました。また、こうした表情に対する感受性が、被験者の年齢によってどう異なるかを特定しました。
被験者がテストを受けたのはインターネット上のプラットフォーム「TestMyBrain.org」。2枚の顔写真を示された被験者は、「どの顔がもっとも怒っていますか?」、「どの顔がもっとも喜んでいますか?」、「どの顔がもっとも恐れていますか?」という質問に答えます。インターネット上で実施したことで、従来より大規模かつ多様なサンプルを集め、より正確な結果を得ることができたと、研究チームは語っています。
調査の結果、思春期・中年期・高齢期では、日常的に接する社会的手がかりへの感じ方が異なることが明らかになりました。
また研究チームは、他者の感情への感受性が思春期にどのようにして発達するのかも追求。すると、怒りの表情への感受性が思春期初期〜中期にかけて劇的に高まることが分かりました。その時代は、人がいじめなどの社会的制裁に順応する時期とちょうど一致しています。怒りへの感受性が正常に発達することで、その時期に直面しがちな障害を乗り越えるのに役立つのです。