
■「事象の地平線」望遠鏡(EHT)が、いて座A*とM87に存在するブラックホールを捉えた観測結果が近日発表される
■EHTは、世界各地の電波望遠鏡を繋ぎ、高い観測周波数でブラックホールの撮影を試みている国際プロジェクト
■Event Horizon(事象の地平線)を越えた物体は、一瞬で姿を消し、二度と元に戻れない
これは期待大です。
いまだに多くの謎に包まれたブラックホールの実際の姿が、ようやく私たちの目の前に現れようとしています。
近日開催予定の天文学の国際学会で、Event Horizon Telescope(「事象の地平線」望遠鏡、EHT)の観測結果が発表されます。EHTとは、世界各地(ハワイ・アリゾナ・スペイン・メキシコ・チリ・南極)に設置された8つの電波望遠鏡を繋いで、高い観測周波数でブラックホールの直接撮像を試みている国際プロジェクトのこと。2017年4月にある2つのブラックホールの観測を行いました。
一度越えると二度と戻れない「事象の地平線」
宇宙には、暗黒エネルギーや暗黒物質といった、目には見えない力や物質が溢れています。その中でも、あらゆるものを粉々にして飲み込んでしまうブラックホールの存在ほど、人々の好奇心を掻き立ててきたものないでしょう。
人類が銀河の中心で強い光を放つ何かを発見したのは、半世紀以上も前のこと。周辺の星がわずか20年でその周りを回転するほどの、強力な重力を持っていました。
太陽系が天の川を周回するのに約2億3,000万年を要することに比較すると、驚くべき重力ですね。のちに、その不思議な何かは、米国の物理学者ジョン・アーチボルト・ホイーラーによって「ブラックホール」と名付けられました。
ブラックホールの周囲には、白熱したガスとプラズマの帯が渦巻いています。降着円盤の内側の縁、つまりEvent Horizon(事象の地平線)を越えた物体は、一瞬で観測可能な宇宙から姿を消してしまいます。それは、ひとたび足を踏み入れると二度と戻ることのできない「戻らずの地平線」です。
事象の地平線の中心には、ブラックホール全体の質量が圧縮されてできた体積を持たない「特異点」が存在します。事象の地平線と特異点の距離は、つまりブラックホールの半径を意味します。