■LHCを用いて暗黒物質を直接観測するための新たな方法が考案される
■暗黒物質の中でも重く速度の遅いものはヒッグス粒子と何らかの形で結びついていると考えられていて、この方法ではLHCを使ってそうした暗黒物質を他の物質から分離する
■現在LHCはアップグレードのため利用不可能なので、再稼働する2021年まで待たなければならない
暗黒物質をつかまえちゃう計画があるらしい。
宇宙科学者たちにとって、未だに大きな謎とされているのが「暗黒物質」の存在だ。
暗黒物質は、宇宙における全物質のおよそ26.8%を占め、68.3%が未知の暗黒エネルギーとされている。しかし、未だかつて誰もその暗黒物質を直接に見たことがない。
重力の反応などで間接的には「あるだろう」とされてきた暗黒物質だが、シカゴ大学の研究者らがついに大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を使って暗黒物質を捕獲し、直接観測できる方法を考案したかもしれないのだ。
今度こそ本当にいける…のか?
Enhancing Long-Lived Particles Searches at the LHC with Precision Timing Information
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.122.131801
ヒッグス粒子がカギとなる
実は暗黒物質といってもいろいろな種類があって、その中でも重くて速度が遅く、通常の物質と相互作用するものがあるらしい。そしてそのような暗黒物質は寿命が比較的長く、1/10秒に及ぶものもあるという。
研究をおこなったLian-Tao Wang物理学教授によれば、前述のような特別な暗黒物質は、何らかの形でヒッグス粒子に結びついているんだとか。物質に質量を与えた起源とされるヒッグス粒子だが、このヒッグス粒子が減衰すると寿命の長い暗黒物質へと変化している可能性も浮上している。
つまり、ヒッグス粒子が「ダーク・ワールドへの扉」を開くカギかもしれないのだ。
さて、観測に可動させるLHCだが、その中では毎秒数十億もの物質の衝突が起こっている。そんなマシンの中でどのようにして暗黒物質を捕獲するのだろうか?