火星でゴンドラ観光は出来ない?
アニメファンの間で有名な作品『ARIA』では、2300年の火星は豊かな水に覆われていてゴンドラ観光がメインの惑星として描かれている。
これは荒唐無稽な設定ではなく、この作品に限らずSF作品ではテラフォーミングに成功した火星は水の惑星として描かれることが多い。
なぜなら火星には大量の水が氷漬けで埋蔵されていると考えられているからだ。
しかし、この考え方はもしかしたら間違いかもしれないのだ。
地球より長い軌道で太陽を回る火星は、一年間が地球換算で約二年分ある。しかも軌道が地球よりも楕円で、南半球が夏になる時期に最も太陽に近づくため、地球に比べてとても温暖な時期が長い。
この影響で水蒸気が局所的に非常に上層まで運ばれる状態が発生する。
このとき、一部の水蒸気の水分子が太陽放射によって、水素(H)とヒドロキシルラジカル(OH)に分解され、そのうち水素が宇宙空間へ逃げてしまうというのだ。
この水素の流出については、火星探査機や宇宙望遠鏡からも観測されており、現在も火星の水分の消失は続いているという。
「早くなんとかしろ! 間に合わなくなっても知らんぞ!」
と言いたいところだが、現在のところ、火星の水分消失を止める方法はなく、黙って見過ごす他はなさそうだ。
このシミュレーションの結果によると、火星はすでにかつてあった水の80%以上を宇宙に水素として逃してしまっているという。
これでは火星をゴンドラ観光が楽しめる水の惑星に変えるというのは難しそうだ。