「絶滅した言語」が使われていた
チェシャー教授はまず、手稿のアルファベットが現在でも馴染みのある文字と見たことのない文字の組み合わせで出来ていることに着目した。文字はすべて小文字で書かれており、二重子音(sh,ks,kyなど)は見られなかった。
いくつかの文字には発音アクセントを示す記号が使われており、また発音表記の簡略化を図るために二重母音(ai,ou)や三重母音(fire,tire)も使用されていた。さらにラテン語表記の文字も数カ所だが見つかっている。
こうした特徴からチェシャー教授は「すでに絶滅しているロマンス祖語(Proto-Romance)ではないか」と推測した。
これは今日のポルトガル語やスペイン語、フランス語、イタリア語などの母語であり、現在のところロマンス祖語の記録文書は確認されていない。
というのもロマンス祖語は中世の地中海地域で普遍的に使われていたものの、公式に記録する重要な文書には用いられなかったのだ。王室や教会、政府などが使う言語は主にラテン語だったため、ロマンス祖語が文書として残ることがなかったという。