Point
■縄文時代の女性の人骨から、すべての遺伝子情報を解析することに成功
■その結果、縄文人は色黒で茶色の瞳、そしてアルコールに強い耐性を持っていることが判明した
■遺伝子的には東アジア大陸の人々に近く、現代日本人とは大きくかけ離れた特徴をしていた
縄文時代の女性はかなりの酒豪だったようだ。
国立科学博物館の研究チームは先日13日、縄文時代の女性の人骨(大臼歯)から全ての遺伝子情報を解析することに成功したと発表。
その結果、縄文女性は濃い色の肌に茶色の瞳、細く縮れた髪をしていてシミができやすく、アルコールに強い耐性を持っていたことが判明した。現代の日本人とはかけ離れたイメージだ。
さらに縄文人はおよそ2万〜4万年前に、アジア大陸に住んでいた集団から別れていたことも明らかとなっている。これにより、日本人発祥の起源が解明されるかもしれない。
研究の詳細は、今月末に学術誌で発表される予定だ。
現代の日本人と全然違う!
縄文女性の人骨が発見されたのは1998年で、場所は北海道・礼文島(れぶんじま)にある船泊(ふなどまり)遺跡だ。人骨の保存状態が良かったことで、現代人のゲノム解析と同等の高い精度でDNA配列を特定することに成功した。
そのおかげで、縄文女性は今からおよそ3960〜3550年前のどこかで生きていたことが分かっている。
他にも高脂肪食に適応した遺伝子が見つかっており、これは当時船泊に暮らしていた縄文人が脂肪分の多いアシカなどを食料にしていたことが原因であるようだ。
このDNA配列を東アジア大陸の人々のDNAと比較してみると、縄文人の祖先となる人々は約3万8千年前〜1万8千年前に集団で日本列島にやって来ていることが判明した。
ちなみに縄文時代はおよそ1万6千年前に始まって、2300年ほど前まで続いたと考えられている。その後、縄文人は大陸からやって来た弥生人と遺伝子的に交わっている。
また今回のゲノム解析によって、縄文人から現代人に受け継がれているDNAの割合に大きな地域差があることも分かった。東京で採取したDNAサンプルでは約1割、沖縄では約3割、北海道のアイヌでは約7割に縄文女性との一致が見られた。
遺伝子的には日本人よりも、韓国や台湾、フィリピン人に近いようだ。
そしてもう一つ、縄文女性は湿った耳垢をしていたことも分かっている。しかし乾燥した耳垢への遺伝子変異はアジア北東部に端を発しており、現代の東アジア人のおよそ95%が乾燥する耳垢の遺伝子を持っている。これは興味深い事実だろう。
つまり縄文女性の特徴は、われわれ現代の日本人とは大きくかけ離れているというわけだ。日本人のお酒の弱さを考えると、ものすごい下戸な遺伝子がどこかで交ざっていたりするかもしれない。
研究チームの神沢秀明氏は「今後、弥生人のDNAなどと比較して、現代日本人の成り立ちを詳しく解明したい」と話している。