Point
■ダイヤモンドの生成過程については、数10億年以上のあまりに長い期間が掛かるために科学者の間でもうまく検証が出来ていない
■ブルーダイヤモンドの青色は海洋鉱石によって作られているという分析結果があり、海洋プレートがダイヤモンドの原料とする説が有力だが、懐疑的な学者も多い
■今回の研究では海洋鉱物を、マントルに近い高温高圧に掛ける実験を行い、実際のダイヤモンドに見られるのとほぼ同じ特性を持つ塩の結晶が形成されることを発見した
美しく可憐なイメージとは裏腹に、ダイヤモンドはマントル深部でとてつもない高圧と高熱に何10億年もさらされ続けて生まれる突然変異の岩石だ。
これを不滅の愛に例えるのは、それほどの忍耐強さが必要だという気の利いた皮肉なのだろう。
そんなダイヤモンドの起源については、生成されるまでの期間が長過ぎること、高価すぎて実験材料にし辛いこと、などから検証がうまく進まず、一致した見解を得られていない。
しかし、現在もっとも有力な説は、海洋プレートが大陸プレートの下へ沈み込んで砕かれた際、マントルへ取り込まれ長い月日を経て結晶化するというものである。
この説にはいくつか証拠が提示されているが、今回そんな中で、ダイヤモンドに含まれる塩分が海洋の塩であることを検証した研究が発表された。
この研究では、実際にマントルに近い状態を再現することでダイヤモンドに含有される塩と同質のものを生成出来たとしており、ダイヤモンドが海のミネラルで作られていることを裏付ける新たな証拠を提示した形だ。
この研究は、オーストラリアマッコーリー大学の研究者らにより発表されたもので、5月29日付けでScience Advances に掲載されている。
https://advances.sciencemag.org/content/5/5/eaau2620
呪いのダイヤが示した海洋起源の可能性
呪われることで有名な「ホープダイヤモンド」は希少なブルーダイヤモンドという種類だが、この種の宝石に青い色を付けているのは、古代の海底に存在したホウ素が由来だという研究がある。
ホウ素は地球表面では豊富だが、マントル内にはほとんど存在していない。これは海洋プレートが沈み込んだ際に、地表の元素がマントル深くへ取り込まれるサイクルについても言及している。
ここで示された事実が、ダイヤモンドは海洋プレート起源だという説を有力なものにしているのだ。
しかし、ダイヤモンドの生成はマントルの非常に深い場所で起こっており、また10億年を超える長大な時間を経て行われている為、ダイヤの海洋起源説については肯定的に捕らえていない科学者も多い。
また、ダイヤモンドが高価なために、幅広く大量に分析出来ないことも、こうした仮説の検証に対して障害になっていた。
信用出来ないなら自分たちでも検証してみろよ! というのが科学の世界だが、
地質学者「検証したいけど、でも…お高いんでしょう?」
という世知辛い理由がダイヤモンドの研究をなかなか進展させてくれないのだ。